あらすじ 宮沢賢治

やまなしのあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/宮沢賢治

国語の教科書にも載っている「やまなし」。

「やまなし」には、“クラムボン”や“イサド”という不思議な言葉が出てきます。

難しい言葉はないけれど、簡単に理解できるわけでもなく、「理解できそうでできない」面白い作品です。

「クラムボンはかぷかぷわらったよ」など、つい口に出したくなるような、おもしろい言い回しまります。

童心にかえって楽しんでください。

「やまなし」とは?

“谷川の底を写した二枚の青い幻燈です”という書き出しから始まる作品です。

2匹のカニの世界を描き、5月と12月の2部構成になっています。

幻燈とはマジック・ランタンとも呼ばれ、映写機の原型にあたるもので美しい映像が映し出されていることを指しています。

 

作者名

宮沢賢治

発売年

1923年

ジャンル

童話

時代

大正時代

宮沢賢治のプロフィール

明治末期~昭和初期(1896年~1933年)に活躍した作家で、主に詩や童話を創作していました。

岩手県花巻市(旧稗貫郡川口村)出身。

なお岩手県は、宮沢賢治が思い描いた理想郷「イーハトーブ」の舞台でもあります。

主な作品

「注文の多い料理店」「風の又三郎」「やまなし」「雨ニモマケズ」など。

地質学・動植物・天文学・宗教など様々な分野への関心があり、造語を作るのが得意でした。

高等農林学校を卒業後、花巻農学校で農民芸術の教師をしていた経歴があります。

そのことがきっかけで、実家は質屋・古着屋にも関わらず、宮沢賢治は農業の世界にはまっていきました。

また妹のトシと仲が良く、トシの死を作品に残しています。

やまなしの特徴

「やまなし」は宮沢賢治が生前に発表した数少ない作品の1つで、2つの特徴があります。

1つ目の特徴は、“自己犠牲の精神”が核になっていることです。

宮沢賢治の数多くの作品は“自己犠牲の精神”が描かれており、「やまなし」もその1つと言えます。

2つ目の特徴は、“生死”や“明暗”、“昼夜”の対比構造です。

5月と12月の2部構成の中に、カニの成長や魚を捕らえるカワセミが描かれています。

やまなしの主要登場人物

2匹のカニ

兄弟

お父さんのカニ

2匹のカニの父

カワセミ

魚を捕らえる鳥

やまなしの簡単なあらすじ

水底にいる2匹のカニの兄弟。

2匹はクラムボンについて話したり、行ったり来たりしている魚を見ていました。

しかし、突然現れたカワセミが魚を捕食したのを見て怖くなります。

12月になると成長した兄弟の近くに、やまなしが落ちてきました。

兄弟はカワセミかと怯えていると、お父さんのカニが“やまなし”だと教えます。

3匹は、やまなしが良い匂いだと言いながら穴に帰って行きました。

やまなしの起承転結

【起】やまなしのあらすじ①

2匹のカニの子どもが水底で、「クラムボンはわらったよ」「クラムボンはかぷかぷわらったよ」と話していました。

兄弟が泡を吐き出していると、1匹の魚がひっくり返ったまま2匹の兄弟の頭上を通って行きました。

「クラムボンは死んだよ」「クラムボンは殺されたよ」と2匹が話していると、今度は他の魚が川の中を行ったり来たりしていました。

【承】やまなしのあらすじ②

いきなり鉄砲玉のようなものが飛び込んできたかと思うと、魚の白いお腹がギラっと光ってのぼって行きました。

2匹のカニの兄弟が恐ろしさにブルブル震えていると、お父さんのカニがやってきて、カワセミという鳥だと説明します。

魚はどこにいったのかと聞いた兄弟に、お父さんは「こわい所へ行った」「心配するな樺の花が流れてきた。ごらん、きれいだろう」と答えました。

【転】やまなしのあらすじ③

水底の景色が夏から秋に変わって、カニの兄弟も大きくなりました。

月が明るく眠れない兄弟は、穴から出て天井を見ていました。

泡の大きさを比べていると、お父さんがやってきて兄弟に「あしたイサドへ連れて行かんぞ」と注意します。

するとトブンと、何かが落ちてきました。

兄弟はカワセミかと思い怯えていましたが、お父さんは「やまなしだよ」「ついて行ってみよう、ああいい匂いだな」と言いました。

【結】やまなしのあらすじ④

月明かりの水の中は、やまなしのいい匂いが広がっていました。

3匹はぽかぽか流れていく“やまなし”のあとを追いました。

「よく熟している、いい匂いだろう」とお父さんが言うと、「おいしそうだね」と兄弟が応えました。

お父さんは「もう2日ぐらい待つと沈んでくる。ひとりでに美味しい酒ができるから、帰って寝よう」と兄弟に促します。

そうして、3匹は自分たちの穴に帰って行きました。

やまなしの解説(考察)

「やまなし」は、5月と12月の2部構成でできています。

水の中に落ちてきたものを比較すると、5月は魚を捕食するカワセミ、12月は良い匂いがするやまなしになっています。

魚やカニはカワセミを生かし、やまなしはカニを生かす存在ということが描かれているのです。

そして魚を捕らえたカワセミが去った後に、樺の花が流れてきます。

樺は山桜とも言われていて、桜と書かれている絵本もありますが、私は白樺だと考えています。

その理由は法華経の写本が白樺の樹皮で作成されているものもあるからです。

宮沢賢治が法華経を信仰していたことから、神聖な植物だと考えていたのではないでしょうか。

やまなしの作者が伝えたかったことは?

宮沢賢治が伝えたかったことは、死が身近であることや自己犠牲の精神だと思います。

カワセミが捕らえた魚は、数秒前まで川を行ったり来たりしていました。

また魚は自身の死によってカワセミを生かす存在であり、自身も他の微生物などによって生かされている存在として描かれています。

カニが魚を見て「何か悪いことをしてるんだよとってるんだよ」と言っていることからも誰もが他者を犠牲にしながら生きており、自己を犠牲にして他者を生かしているというメッセージではないでしょうか。

やまなしの3つのポイント

ポイント①クラムボン

「やまなし」にはクラムボンという言葉が出てきますが、これは宮沢賢治の造語で、プランクトンや光・泡・アメンボ・お母さんのカニなどの説があります。

私が考えるクラムボンは、クラム=2枚貝、ボンはもともとポンだったとも言われておりいるため、アイヌ語の小さいを指していると考えています。

つまり小さい貝のことで、“かぷかぷわらった”というのは貝が開いたり閉じたりすることを表現しているのではないでしょうか。

ポイント②イサド

イサドも宮沢賢治の造語であり、さまざまな議論がされています。

「あしたイサドへ連れて行かんぞ」という言葉から、地名という説があります。

宮沢賢治は岩手県を“イーハトーブ”と呼んでいたことから、“イサド”というのインスパイアした地名があるのかもしれません。

私はイサドは、仏教の聖地である“天竺(インド)”をイメージしていると考えています。

ポイント③5月と12月

「やまなし」は、5月と12月の2部構成になっています。

12月はもともと11月だったとも言われていますが、これは仏教の“灌仏会(かんぶつえ)”、“成道会(じょうどうえ)”がある月を選んだのではないでしょうか。

“灌仏会”はお釈迦様の誕生を祝う月で、“成道会”はお釈迦様が悟りを開いた月です。

また、11月は宮沢賢治の妹トシが亡くなった月なので、そこからきていると思います。

やまなしを読んだ読書感想

小学生のときは語感が面白くて好きな作品でした。

久しぶりに「やまなし」を読み返してみて、生死の対比や“やまなし”が落ちてくる小さなできごとに幸せを感じることができます。

また、水底の風景描写がキラキラしていてイメージするだけでワクワクすることができる作品だと思います。

やまなしのあらすじ・考察まとめ

谷川の底にいる2匹のカニの兄弟は、水中を行ったり来たりしている魚やカワセミに対して他者を殺して生きる瞬間を目にします。

そして、成長した2匹のカニはある日の夜、外に出て“やまなし”が川の中に落ちたのを見たのでした。

「やまなし」には、死が身近なものであることや、生きることの喜びは些細なものであることが分かります。

また、水底の綺麗な風景が心を浄化してくれる作品です。

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