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スクラップ・アンド・ビルドのあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/羽田圭介

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オーディオブックの魅力や使い方を徹底解説

あなたは、スクラップ&ビルドという言葉を知っていますか?

これは建築業界で使われる言葉で、建築物を解体し、また建築するという意味で使われます。

今回ご紹介する「スクラップ・アンド・ビルド」は、主人公が要介護状態の祖父の願いである「苦しみのない死」を叶えようと奔走する作品です。

主人公は祖父の願いを叶えるため、人生における「スクラップ・アンド・ビルド」を試みます。

主人公の人生、そして祖父の運命はどうなってしまうのでしょうか?

この記事では「スクラップ・アンド・ビルド」のあらすじやネタバレから感想・考察まで徹底的に解説していきます。

 

スクラップ・アンド・ビルドとは?

無職の孫は祖父の言葉に動かされ、祖父の願いである「苦しみのない死」を実現しようとします。

しかし、「苦しみのない死」は、祖父の本当の願望なのでしょうか?

日々の転職活動や筋トレなどを通して人生を再構築中の孫は、衰えていくばかりの祖父の隣である発見をします。

 

作者名

羽田圭介

発売年

2015年

ジャンル

現代文学・純文学

時代

現代

羽田圭介のプロフィール

羽田圭介 1985年生まれ

東京都生まれの日本の小説家です。

高校時代は、放課後に毎日自転車でトレーニングをしていたそうです。

明治大学附属明治高校に入学し、17歳の時に「黒冷水」で文藝賞を受賞します。

その後明治大学に入学し、2015年「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞を受賞しました。

お笑い芸人の又吉直樹との同時受賞や、羽田圭介本人のキャラクターが話題になり、テレビ番組への出演が激増します。

2017年にはNHKのスペシャルドラマで俳優デビューも果たしました。

 

羽田圭介の代表作

羽田圭介の代表作には「黒冷水」「スクラップ・アンド・ビルド」「メタモルフォシス」などがあります。

作品の特徴としては、男性を主人公にして、家族間の静かな攻防戦を描いたものが多く存在します。

作品のリアリティゆえに、これらは羽田圭介の私小説なのではないかと思う読者も多いそうです。

日常にひっそりと潜む問題を題材にしているので、作品を読む前と読んだ後で自分の思想がガラリと変わってしまう人もいるかもしれません。

 

スクラップ・アンド・ビルドの主要登場人物

健斗

27歳の無職で、現在転職活動中です。

じいちゃん

要介護状態で、杖をついて家の中を歩き回っています。

要介護状態時の祖父に厳しく接します。

亜美

健斗の恋人です。

 

スクラップ・アンド・ビルドの簡単なあらすじ

健斗は新卒から5年間勤めたカーディーラーを退社してから、7ヶ月間転職活動をしてきました。

家には母親と要介護状態の祖父が暮らしており、健斗は、祖父の「もうじいちゃんは死んだらいい」という言葉を毎日聞いていました。

ゆるゆると続けている転職活動の合間には、ベッドに横たわるくらいしかやることがありません。

そこで、健斗はあることに気がつきました。

健斗は、祖父の言葉を言葉通りに受け止めてあげなければいけないと思い、祖父の「死にたい」という願望を叶えてあげることにしました。

介護福祉士の大輔にアドバイスをもらい、足し算の介護で祖父の今持っている能力を奪うことにしました。

祖父は「死にたい」と口にしながらも、杖をつきながら家の中を歩き回り、体がなまらないようにしていました。

祖父の回復を願う母親は祖父に家事の一部を任せていましたが、健斗は「楽させてやりたいから」とその全てを引き受けました。

健斗は転職活動の合間に筋トレを始め、その様子を見ていた祖父はいつになく楽しそうにニヤニヤしていました。

祖父は昔戦闘機に乗る訓練を受けており、その時にやった「急降下」というトレーニングと似ていたようです。

ある日、健斗が予定より早く帰宅すると、暗闇の中を素早く動く物体が見えました。

そして、キッチンにはピザに玉ねぎをトッピングして食べた形跡が残されていました。

祖父を風呂に入れた際、湯船に溺れてしまうとしがみつく祖父の手をふりきり、健斗はトイレに行きました。

風呂に戻ってみると、湯船でバシャバシャと音を立てながら、祖父が暴れています。

わざと溺れさせたと怒られるのではないかと不安に思いましたが、祖父からは「ありがとう、健斗が助けてくれた」と言われただけでした。

そこで健斗は、祖父の「死にたい」という願望は本物ではなかったことに気がついたのです。

無事に転職先を決めた健斗は母と祖父を残し、電車に乗って勤務先の社宅へ引っ越していきました。

電車からはセスナ機が飛んでいるのが見えましたが、やがて積乱雲の中に消えていきました。

 

スクラップ・アンド・ビルドの起承転結

【起】スクラップ・アンド・ビルドのあらすじ①死を望む祖父

健斗はいつものように昼過ぎに起床し、テレビをつけました。

慢性的な腰痛と昨日の単発アルバイトのせいで、座っているのも辛い状態です。

転職活動のための行政書士の勉強も、花粉症のせいで手につきません。

新卒で5年間勤めたカーディーラーを辞めてからは、ただ漠然と時間をやり過ごさなければいけない地獄に耐えてきました。

部屋で寝ているであろう祖父の話し相手にでもなろうと思い、健斗は動き出しました。

祖父は毎日のように体の不調を訴えており、今日も「もうじいちゃんは死んだらいい」と口にするのです。

そう言いながらも気が向いた時だけ、杖をつきながら家中を歩き回って、体が鈍らないようにしています。

祖父の元を離れた健斗はパソコンを開きましたが、5分も経たないうちに集中力が切れてしまいました。

花粉症で体の調子が悪く、腰痛もいつにも増してひどいので、ベッドに横になるしかありません。

ふと、健斗はあることに思い至ります。

自分は今まで祖父の魂の叫びに耳を傾けず、聞き流していただけなのではないだろうかと思ったのです。

健斗は、祖父の「死にたい」という言葉を、言葉通りに受け止める真摯な態度が欠けていたことに気づきました。

健斗は、苦痛や恐怖心のない穏やかな死を祖父に届けるために、自分ができることは協力しようと心に決めたのです。

【承】スクラップ・アンド・ビルドのあらすじ②「急降下」に笑う祖父

土曜日の午後、健斗はファミリーレストランで大輔と食事をしていました。

健斗は、介護福祉士の大輔に、祖父の願いを叶えるためのアドバイスを求めました。

すると、被介護者の動きを奪うのが一番だということになり、足し算の介護で祖父の脳や身体の働きを奪うことにしました。

健斗は、ある朝母親と祖父の言い合いで目を覚ましました。

祖父からお茶を出すように頼まれた時、健斗も、そういうことは自分でやる約束だろうと言いかけましたが、足し算の介護を思い出しました。

数時間前に母に「殺せ」と喚いていた祖父は、「いただきます」と言ってバウムクーヘンを頬張っています。

テレビで「硫黄島からの手紙」を再生し始めた健斗は、戦争を経験した祖父の前でこういうものを見ることに一瞬躊躇しました。

しかし、祖父は「部屋に戻ろかね」と言って自室に戻っただけでした。

当時の辛い記憶を思い出したというよりは、単にストーリーを追えないだけのようです。

祖父がショートステイに行っている間、健斗はやることがなくなってしまいました。

恋人の亜美は仕事で、ショッピングをするお金もなく、残るは運動しかありません。

健斗はすぐジャージに着替え、走りに出かけました。

健斗はトレーニングを始めてから、セックスで亜美を満足させることができるようになりました。

健斗が腕立てをしていると、祖父が「じいちゃんは昔、それをきゅうこうかって言われてやらされた」と興味を示してきました。

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オーディオブックの魅力や使い方を徹底解説

祖父は昔、特攻の訓練場にいたらしいのです。

そういえば、今日はまだ「死にたい」と口にしていません。

それどころか「急降下」をしている健斗を見ながら、へらへら笑っています。

気が変わったのだろうかと、健斗は不安になりました。

 

【転】スクラップ・アンド・ビルドのあらすじ③俊敏な動きをする祖父

健斗は亜美と会う約束をしていたため、祖父を残して家を出ました。

しかし、亜美から「今日行けない。ごめんね。」というそっけない連絡が入り、予定がキャンセルになりました。

健斗が予定より早めに家に帰ると、何か黒く小さなものがすごい勢いでリビングから台所へ駆け抜けていくのが見えました。

健斗は不思議に思いながらも部屋のテレビをつけると、家を出る前に見ていたチャンネルとは違うチャンネルが映りました。

健斗は訝しげに台所に行ってみると、そこにはタマネギをトッピングした冷凍ピザを食べた痕跡が残っていました。

祖父は簡単な家事もろくにできないのに、自分の欲望を満たすための複雑な家事をやってのけたのだろうかと疑問に思いました。

水が流れる音がした後、祖父がトイレから自室に向かったようでしたが、杖をつく音はしませんでした。

いつも通りトレーニングを済ませ性欲が湧いたところで、健斗は亜美に電話をかけました。

電話に出た亜美に、今から会わないかと提案するも却下されてしまい、健斗はこう言いました。

「人はね、どこかに出かけたり、スキンシップしたり笑いかけられたりしないと、すぐダメになっちゃうんだよ」

とりつくしまのない亜美からは、すぐに電話を切られてしまいました。

 

【結】スクラップ・アンド・ビルドのあらすじ④風呂で溺れる祖父

午後六時過ぎ、デイサービスから帰ってきた祖父を玄関まで迎えにいき、階段を登ろうとしました。

しかし、祖父は「もう歩けない」と階段を登ることをやめてしまいました。

健斗が「泣いてもなんも始まんねえぞっ!」と大きな声を出すと、祖父はたいして時間もかけずに階段を登り切ったのでした。

健斗は、祖父が乗り損ねた戦闘機とはどんなものか気になり、戦争映画を見てみることにしました。

しかし、母親から、祖父は適性落ちで特攻の訓練兵になることができなかったという事実を知らされます。

健斗が祖父を風呂に入れていると、「溺れる」と騒ぎ出して腕を掴んできたので、その腕を振り解いてトイレにいきました。

風呂場に戻ると、何やらバシャバシャと音が聞こえます。

健斗は溺れている祖父を見て慌てて助け出し、同時に「怒られる」と感じました。

弱音も文句も言わない祖父の圧力に、潰されそうでした。

やっとひいた口から「ありがとう。健斗が助けてくれた」といわれ、健斗は動きを止めました。

「死ぬとこだった」というひとことで、健斗は自分が大きな思い違いをしていたのではないかと気がついたのです。

やがて転職活動が成功し、健斗は茨城の社宅に引っ越すことになりました。

健斗は電車に乗りながら、積乱雲に隠れていくセスナを見ていました。

 

スクラップ・アンド・ビルドの解説(考察)

作中では、これから人生の再構築を図る健斗と、衰えていくばかりの祖父の対比が描かれています。

ただ時間が過ぎるのを待つばかりの生活をしていた健斗でしたが、祖父の「足し算の介護」をすることで、生産的な生活をすることができていたようです。

祖父へ「足し算の介護」をするようになったのは、祖父の本当の願いを叶えてあげようとしたからです。

健斗はテレビで流れている高齢者のニュースに関心を持っている様子から、日本における高齢者の存在意義について疑問を抱いていることがわかります。

そして「もう、死んだらいい」と口にする祖父の姿を見て、これが祖父の本当の願いなのだと断定しました。

しかし、祖父は風呂で溺れそうになった時「死ぬところだった」と言いました。

ここで健斗は、祖父の本当の願いは死ぬことではないと気がついたのです。

健斗は、衰えていくばかりの祖父の前で筋トレをしながら、自分の身体の将来性を確認していました。

そうすることで、自分の中に残されている可能性を信じようとしていたのでしょう。

人は自分より劣っている誰かと比較することで、自分自身の価値を相対的に上げようとすることがあります。

健斗も祖父を利用して、自分の生活を充実させました。

健斗は祖父の願いを叶えてあげようとする裏側で、自分自身のことも変えようとしていたのです。

 

スクラップ・アンド・ビルドの作者が伝えたかったことは?

「人はね、どこかに出かけたり、スキンシップしたり笑いかけられたりしないと、すぐダメになっちゃうんだよ」

健斗が亜美に放ったこの言葉こそが、作者の伝えたかったことではないでしょうか。

人は何かしらのかたちで社会と繋がっていないと、自分を見失ってしまいます。

祖父は家族にしがみつき、健斗は祖父にしがみつき、お互いに存在を確かめ合っています。

健斗は祖父との関わりを深めることで、時間を空費するだけの生活から抜け出すことができました。

祖父は身体の不調を訴えて家族に甘えることで、寂しさを紛らわそうとしていたのでしょう。

お互いの思惑が重なり、健斗は無事にスクラップ・アンド・ビルドを果たします。

人間が人間らしく生産的な生活を送るためには、家族や友人・社会との関わりが必要不可欠になってくるのです。

 

スクラップ・アンド・ビルドの3つのポイント

ポイント①祖父と孫という関係性

健斗は要介護状態の祖父に対して、常に優位な立場から接しています。

頼みごとをしてくる祖父に対して、声を荒げる場面もありました。

しかし、祖父が風呂で溺れて閉まった時には「怒られる」と、緊張感でいっぱいになっています。

いくら身体的に衰えている祖父でも、健斗にとってはいつまでも祖父であり、人生の先輩ということに変わりはないようですね。

 

ポイント②積乱雲に消えたセスナ

作品の最後、健斗が電車からセスナを見つめる場面が描かれています。

セスナは、「先人」たちの象徴であると考えられます。

健斗が祖父に生きる力をもらったように、電車に乗る人たちもどこかしらで「先人」たちから力をもらっているはずです。

「積乱雲」という困難に向かっていくセスナを見て、健斗をはじめ電車に乗る人たちは、勇気をもらったのではないでしょうか。

 

ポイント③作品タイトルの由来

「スクラップ・アンド・ビルド」というタイトルは、筋トレと日本の高度経済成長の2つを表すものだそうです。

過度な負担により筋繊維を破壊し、もとより太い筋繊維に成長させる筋力トレーニング。

これまで構築してきたものを壊し、壊され、日本が新たに積み上げてきた高度経済成長という歴史。

この作品にこれ以上のタイトルはないだろうと思えるほど、ぴったりなタイトルですよね。

 

スクラップ・アンド・ビルドを読んだ読書感想

私が初めてこの作品を読んだ時いちばん印象に残ったのは、健斗や母親の態度です。

要介護状態の祖父に対して横暴な言葉遣いで接している場面では、祖父を気の毒に思っていました。

しかし、祖父が甘いものだけを好んで食べることや、杖をつかなくても歩けることなどが後から明らかになっていきました。

母親は祖父が食べる用の食事もしっかり用意していますし、祖父がそれを吐き出すのはただのわがままだと感じたのです。

一見しただけだと、健斗や母親が祖父に対してひどい態度をとっているように見えますが、実際はそうではありませんでした。

現実世界でも、他人の家族のことは表面上のことしかわかりません。

家族という小さなコミュニティの中でさえも、理解できないことは数多く存在します。

社会で多くの人と関わりながら生きて行くのは、とても難しいことなのだと感じました。

 

スクラップ・アンド・ビルドのあらすじ・考察まとめ

生きていくには、人との関わりが必要になります。

家族でも友人でも恋人でも、誰かとつながっていてこそ、人は自分を保って生きていられるのです。

そして、何か失敗してしまったとしても、またやり直すことができます。

長い歴史のなかで、世界は同じ過ちを繰り返してきました。

しかしその度に、復興と更なる発展を遂げています。

「スクラップ・アンド・ビルド」の登場人物たちは、闘い続ける力を与えてくれました。

どうすることもできない辛い状況でも、私たちは闘い続けるしかないです。

 

 

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