この記事では斜陽のあらすじを端的にまとめ、どんなテーマを持ち、なぜ長い間読み続けられるのかをまとめていきます。
斜陽のあらすじを理解して、読んだ事がない方は、「斜陽の魅力に触れる」
読んだ事がある方は、一つの解釈として「考えを深めてもらう」
ということに繋がるように分かりやすくまとめていきます。
『斜陽』とは?
太宰治と言えば、『斜陽』と『人間失格』が浮かぶ人も多いと思います。
「戦後の世の中で、没落した貴族の娘であるかず子が、恋と家族の死の中から新しい常識そして生き方を選ぶ話」です。
太宰治の愛人である太田静子の日記を、創作の材料に使っているということでも有名です。
斜陽の主要な登場人物
かず子(主人公) | 名家の令嬢で母と暮らしている |
上原 | かず子の恋愛相手既婚者 |
かず子の母 | 夫をなくしてかず子と二人で暮らしている |
直治 | かず子の弟 |
和田のおじさま | かず子の母の弟 |
斜陽のあらすじ
名家の令嬢だったかず子は伊豆の支那風のお屋敷で、戦争に行った弟の直治を待ちながら、母親と暮らしています。
やがて直治は、日本に帰って来たものの落ち着かず、伊豆と東京を行き来する暮らしを送り、小説家の上原らと行動を共にします。
かず子は上原を慕い手紙を送りながら母親との日々を過ごすうちに、母親が死に至る病まいに、かかってしまいます。
斜陽の解説と考察ポイント
かず子の心情を写す手段として使われている手紙
最初は遠回りに記していますが、段々と大胆になります。
最後は上原の事を決めつけて、脅しのような要望を記しています。
これは、女性が男性よりも弱い立場から、段々と平等に最後には立場が逆転していることを表していると思います。
革命
かず子にとって恋は革命です。「上原は違う革命をしているのでしょう」とかず子は語ります。
そしてその革命を否定するでも無く、肯定するでもないです。
これは多様性を表しているのだと思いました。
母親と直治の死
母親は、肺の病気で亡くなります。
弟の直治は自殺します。
お母様の死は時代の変化、価値観の変様を表しています。
直治の死は若いながらも旧価値観の中でしか生きられ無かったことを表しています。
斜陽の感想
まず、感じるのは、この小説の文章の綺麗さです。
時代が違う世界を素直に視覚、聴覚そして嗅覚で感じられるのは、言葉がよどみみなく、感性に溶けていくためでしょう。
そして次に感じるのは、先ほども触れた男女の立場や多様性です。
この小説が訴える内容は、現代社会にも通じる普遍的なものを、元貴族であり女性のかず子
視点で描く事により主張を押し付けない形で伝えてきます。
斜陽のあらすじまとめ
斜陽にて、太宰治は普遍的なテーマを伝えたかったのだと思います。
政治家でも思想学者でも無い彼が、一般の人々に分かりやすく、また娯楽として伝えたのが、この小説なのだと思います。
そのための舞台装置は見事なものです。
戦後、貴族、肺病、恋、薬物中毒、革命とキーワードが散りばめられています。
また多様性や男女平等は、現代の日本、世界で論じられているテーマであることからいかに、太宰治の感覚が新しいものだったか、現代に読み返す小説の一つです。