あらすじ 村上春樹

海辺のカフカのあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/村上春樹

海辺のカフカ

村上春樹の代表作のひとつである『海辺のカフカ』。

2012年、2014年には蜷川幸雄演出によって舞台化されたということもあり、「タイトルは知っているんだけど…」といった方も多いのではないでしょうか。

今回は「これからの読書の手助けとして全体像を予習しておきたい」という方や、「読んでみたものの、イマイチよく分からなかった」という方のために、解説や考察も交えあらすじを紹介していきます。

『海辺のカフカ』とは?

『海辺のカフカ』は、村上春樹が23歳の時に発表した10作目の長編小説です。

ギリシア悲劇のエディプス王の物語や、『源氏物語』や『雨月物語』などの日本の古典小説などがベースとなっています。

2002年9月12日新潮社より上下二分冊で刊行され、その後2005年3月2日には文庫版が同じく新潮社から公刊されています。

長期的に発行部数を伸ばしている作品でもあり、『21世紀の新潮社発行部数ランキング』では『1Q84』や『騎士団長殺し』などの名作を抑え1位に選出されています。

2005年にフィリップ・ガブリエルにより訳された英語版『Kafka on the Shore』は、「ニューヨーク・タイムズ」紙にて「ベストブック10冊」および世界幻想文学大賞に選出されました。

英語だけでなくフランス語や中国語をはじめとした29か国語に翻訳されており、2008年にはアメリカにて舞台化されています。

日本では名演出家である蜷川幸雄によって2度に渡り舞台化されました。

作者名

村上 春樹(むらかみ はるき)

発売年

2002年9月12日

ジャンル

純文学

時代

現代

村上春樹のプロフィール

村上春樹は1949年1月12日(昭和24年)京都府に生まれました。

生後間もなく兵庫県西宮市、さらに芦屋市に転居し、10代のほとんどはこの地で過ごします。

早稲田大学第一文学部演劇科卒業し、大学在学中の1971年(昭和46年)に学生結婚します。

1974年にはジャズ喫茶「ピーター・キャット」を開店し、「毎日夜遅くまで働いて、夜中にビールを飲みながら台所のテーブルに向かって書いた」とエッセイの中で語っています。

処女作『風の歌を聴け』(1979)が群像新人文学賞を受賞し、選考委員から「近来の収穫」「この新人の登場は一つの事件」と評されました。

同作、『1973年のピンボール』(1980)、『羊をめぐる冒険』(1982)の三部作により「ムラカミ・ワールド」を確立し、多くの作家たちに影響を与えました。

1987年発表の『ノルウェイの森』は上下巻1000万部を売るベストセラーとなり、村上春樹ブームの火付け役となりました。

村上春樹の熱狂的なファンは「ハルキスト」と呼ばれ、作品だけでなく生活様式や人間性に酔倒していることで知られています。

日本国外でも人気が高く、2006年にはフランツ・カフカ賞をアジア圏で初めて受賞し、近年ではノーベル文学賞の最有力候補として毎年名前が挙がっています。

『海辺のカフカ』の特徴

20代後半から30代前半の主人公が多い村上春樹の作品にしては珍しく、『海辺のカフカ』は15歳の少年「田辺カフカ」が主人公となっています。

これは、10代のの葛藤やエディプス・コンプレックスを乗り越えてゆく過程を描くためだとされています。

また、『海辺のカフカ』は世界を異にした2人の主人公(カフカとナカタ)の物語が同時平行的に進んでいくパラレル進行も特徴であり、この手法は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『1Q84』に類似しています。

2002年9月12日から2003年2月14日には、期間限定で『海辺のカフカ』のホームページが設けられました。

13歳から70歳まで、アメリカ、韓国など世界各国から感想や質問が寄せられ、のちに『少年カフカ』(2003年6月10日刊)に収録されました。

多くの謎を残したまま終わる村上春樹らしい物語の特性上、多種多様な解釈が展開されていますが、村上春樹自身は読者それぞれの解釈を重要視し答えを明示しないという姿勢をとっています。

『海辺のカフカ』の主要登場人物

田村カフカ

本作の主人公。15歳の少年。昔母親に捨てられた傷を負う。家出をする。

ナカタさん

本作のもう1人の主人公。猫と話せる男性。知的な障害がある。

佐伯さん

香川の甲村図書館の館長。

大島さん

甲村記念図書館の司書。21歳。血友病で性同一障害であり、カフカの良き相談相手。

さくら

若い女性美容師。カフカが夜行バスで高松に行く途中のサービスエリアで知り合った。

『海辺のカフカ』の簡単なあらすじ

15歳の少年「田村カフカ」は、父親からかけられた「お前はいつか自分の手で父親を殺し、母と姉と交わるだろう」という呪いの言葉から脱出するために家出をし、香川に向かいます。

一方、知的障害を持った老人「ナカタさん」は、人から猫探しを頼まれながら過ごしていました。

ある日「猫殺し」という男に出会い、ひょんなことからその男を殺してしまいます。

全く別の道を歩んできた2人の人生は、不思議な繋がりで交差してゆきます。

『海辺のカフカ』の起承転結

【起】『海辺のカフカ』のあらすじ①

田村カフカは、都内で父親と二人暮らしをしている15歳の少年です。

昔母親から捨てられたことがずっと心の傷となっているカフカは、誕生日に父親から「お前はいつか自分の手で父親を殺し、母と姉と交わるだろう」という言葉をかけられます。

争い難い呪いから脱出するために、「カラスと呼ばれる少年」からアドバイスをもらいながら家出をします。

深夜バスで四国を目指し、その中でさくらという女性と出会います。

四国に着いてしばらくは、規則正しい生活を送っていたカフカでしたが、ある朝目覚めると、自分が森の中で血だらけで倒れています。

驚いたカフカはさくらに連絡し、さくらの家に泊めてもらうこととなりました。

一方ナカタさんは、生活保護を受けながら生活をしている男性です。

小さい頃に起こった事件により脳に障害が残っており、読み書きや知的な能力が弱いのです。

その代わり猫と話すことができるため、人々から猫探しを頼まれながら暮らしていました。

ある日、猫探し中に出会った「猫殺し」の男を、猫を助ける代わりに殺害してしまいます。

その「猫殺し」の男は、実はカフカの父だったのです。

そして、トラック運転手の星野と出会い、「入口の石」を探すという使命に従い高松へ向かいます。

【承】『海辺のカフカ』のあらすじ②

カフカはさくらの家を出て甲村図書館に向かい、司書の大島さんに泊めて欲しいと申し出ます。

すると大島さんは、自分の持つ別荘に泊まってはどうかと提案します。カフカは別荘のある高知に向かうのでした。

しばらく高知で暮らしていていましたが、その後司書の大島さんの迎えにより図書館での生活を開始します。

片や甲村図書館の館長の佐伯さんは、幼い頃から順風満帆な環境で育ちました。

そんな中、許嫁の甲村少年は東京の大学に行ってしまい、20歳の時に亡くなってしまいます。

佐伯さんは行方不明になり、その25年後に高松に戻り図書館の責任者となりました。

カフカが過ごしてしていたのは、亡くなった甲村少年が使っていた部屋だったのです。

そのうち、毎晩15歳の佐伯さんの幽霊がその部屋を訪れるようになり、カフカは恋をし関係を持ちます。

カフカは心の内で佐伯さんが自分の母親なのではないかと思いますが、佐伯さんは答えてくれません。

【転】『海辺のカフカ』のあらすじ③

ナカタさんは「入り口の石」を探すべく、トラック運転手の星野さんの協力のもと甲村図書館に辿り着きます。

そこで佐伯さんと会って話し、佐伯さんはナカタさんに自分の記録を消して欲しいとお願いします。

その後、佐伯さんは机に伏して亡くなりました。

一方その頃、カフカの父が殺されたことから、警察はカフカを追っていました。

それを知ったカフカは、もう一度高知の小屋へと逃げ込みます。

そこでさくらを犯す夢を見て、カフカは複雑な気持ちになります。

カフカは森の中をどんどん進み、途中で荷物も全て捨て去ります。

すると、昔その場所で行方不明になったという2人に会います。

2人曰く、ここは時間の概念がない場所だとのことでした。

そこには15歳の佐伯さんや現在の佐伯さん、本のない図書館もありました。

現在の佐伯さんは、カフカには生きていって欲しいと言い1枚の絵を渡します。

その絵のタイトルは「海辺のカフカ」でした。

【結】『海辺のカフカ』のあらすじ④

ナカタさんとホシノさんは、図書館を出て佐伯さんの記録を全て燃やします。

ナカタさんはそのあと、役目を終えたかのように息絶えました。

遺された「入り口の石」を閉じるという役目を引き受けたホシノさんは、その時がくるまでナカタさんの亡骸と共に過ごします。

ホシノさんはナカタさんの猫と話せる能力を引き継いでいました。

そして、猫から「邪悪なものが入り口の石を狙いに来る」と告げられます。

夜中になるとその邪悪なものが現れました。

白くて奇妙な形をしており、なかなか倒すことができませんでしたが、なんとかそれを仕留め焼きいてしまいました。

その後、警察にナカタさんのことを通報します。

カフカは森を出て、高知へと戻りました。

そこには大島さんの兄がいました。2人は図書館へ向かい、大島さんに挨拶をします。

カフカは東京に戻り、もう一度学校に行くことを決意したのでした。

『海辺のカフカ』の解説(考察)

『海辺のカフカ』の主なテーマのひとつは、エディプス・コンプレックスの発達過程でいかに葛藤を乗り越えていくか、というものです。

エディプス・コンプレックスは精神分析学者フロイトによって提唱された概念で、「男子が母親に性愛感情を抱き、父親に嫉妬する無意識の葛藤感情」です。

父親がカフカ少年に投げかけた「お前はいつか父親を殺し、母親と交わる」という呪いは、思春期の「暴力」と「性」の象徴といえます。

著名な彫刻家である父親には、芸術性と残虐性の二面性があり、父親から虐待を受け続けたカフカもまた、もうひとつの暴力的な人格を持ちはじめます。

強いオルター・エゴ(別人格)の出現への危惧から、カフカは強い解離性同一性障害(多重人格)に引きこまれてゆくのです。

父親からの告げられる呪縛に向き合い、乗り越えてゆくことで、真の強い自我を形成しなければなりません。

この呪縛と向き合おうと、カフカは甲村図書館の館長の佐伯さん、深夜バスで知り合ったさくらさんとの関係のなか、成長を遂げてゆきます。

佐伯さんもさくらさんも、血の繋がったの母姉ではありません。

しかし彼女たちはそれぞれ母姉のメタファーとしてカフカの前に現れ、成長を導く重要な役割を果たしているのです。

『海辺のカフカ』の作者が伝えたかったことは?

1995年以降、阪神淡路大震災やオウム事件といった未曾有の出来事に日本は見舞われました。

そしてバブル崩壊後起こった神戸連続児童殺傷事件の犯人が少年だったことに、人々は恐れ慄きます。

少年犯罪は大きな社会問題となってゆきます。

少年刑法犯検挙人員総数の推移を見ると、まさに1995年から毎年増大していく傾向にありました。

1998年には22万1,410人となり、1995年に比べて14.5%も増加しました。

そんな時代の最中発表された、「エディプス王」を下敷きに、「お前はいつか自分の手で父親を殺し、母と姉と交わるだろう」と予言されたカフカ少年が、その呪縛から逃れるために四国に向かう物語。

「絶対的な悪」とそれに立ち向かっていく少年の姿もまた、『海辺のカフカ』の重要なテーマといえるでしょう。

『海辺のカフカ』の3つのポイント

ポイント①そもそも『エディプス王』とは?

『エディプス王』は、ギリシャ神話を題材としてギリシャ三大悲劇詩人の1人であるソフォクレスが書いた戯曲です。

ギリシャ悲劇の最高傑作という評価を受けていおり、劇作品の手本とみなされています。

テーバイの王オイディプスは国に災いをもたらした殺害犯を追いますが、それが実は自分であり、しかも産みの母と交わって子どもを産んでいたことを知り、自ら目を潰し王の座を退位するまでが描かれています。

言うまでもなく「エディプス・コンプレックス」の語源となった物語です。

岩波文庫や光文社文庫から発行されているので、『海辺のカフカ』の原点を探す気持ちで読んでみてはいかがでしょうか。

ポイント②カーネルサンダースって誰?

村上春樹作品が難解だとされる理由のひとつに、メタファー(隠喩)が多く用いられてるという点が挙げられます。

『海辺のカフカ』で多くの人が最後まで疑問に感じるのは、カーネルサンダースの存在ではないでしょうか。

夜の街で、あのKFCのカーネルおじさんの格好でポン引きしている老人が出てきます。それがカーネルサンダースです。

本作の中で、カーネルサンダースは「善を代表するもの」として描かれているのです。

さらにいえば、ギリシャ神話の中に出てくる「デウス・エクス・マキナ」として表現されていると考えられます。

「デウス・エクス・マキナ」とは「機械仕掛けの神」というの意味の言葉です。

由来は、古代ギリシャ劇の終幕で上から機械仕掛けで舞台に降り、行き詰まった事態を円満におさめる神の役割からとられています。

転じて、作為的な大団円のことを指す言葉でもあります。

『海辺のカフカ』では、カーネルサンダースは「神に非ず仏に非ず、もと非情の物なれば人と異なる慮(こころ)あり」と自身について説明しています。

このことからも、彼は本作における「デウス・エクス・マキナ」であることが読み取れます。

ポイント③ベートーヴェン「大公トリオ」とは?

『海辺のカフカ』クライマックスでは、ベートーヴェンの「大公トリオ」が登場します。

正式名称を『ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調Op.97』というこの曲は、これまでのピアノ三重奏曲の頂点に君臨すると評されるほどの傑作です。

ベートーヴェンは、この曲をオーストリアのルドルフ大公に献呈しました。

ルドルフ大公は、当時の皇帝であったレオポルド2世の息子です。

彼は音楽の才能に恵まれており、16歳のときからベートーヴェンの弟子としてピアノと音楽理論を学んでいました。

2人のエピソードから、「大公トリオ」と呼ばれるようになったのです。

ベートーヴェンとルドルフ大公の関係は、『海辺のカフカ』のナカタとホシノの関係のようです。

ナカタは、少年期の事件により障害を背負い、字も読めなくなってしまいます。

そんなナカタと知り合いとなり、彼の人生を援助したのがホシノという人物です。

まるでルドルフ大公がベートーヴェンを援助した関係と同じように、ホシノがナカタに協力することによって物語が展開していくのです。

こうした隠されたモチーフを見つけることもまた、『海辺のカフカ』を読む楽しみのひとつでしょう。

『海辺のカフカ』を読んだ読書感想

読む時期や年齢によって捉え方がガラリと変わることが読書の醍醐味のひとつですが、『海辺のカフカ』はそうした読書体験を得るのに特に適した作品ではないかと感じました。

筆者は『ノルウェイの森』を中学時代に初めて読んだのですが、その後20代に入ってから再読すると全く印象が変わっており、自分の人生を思い返すきっかけともなったことを鮮明に覚えています。

読書によって得られるカフカの追体験は、もしも10代のころに出会っていればさらに新鮮だったに違いありません。

思春期のまっさらな感性を思い出しながら、ぜひ読んでいただきた1冊です。

『海辺のカフカ』のあらすじ・考察まとめ

今回は『海辺のカフカ』のあらすじと考察について紹介してきました。

複雑な物語構成と度重なるメタファー表現に、やや読みづらい印象を持つかもしれません。

もし読書の手がどうしても止まってしまうようであれば、登場人物を自分の身近な人に置き換えてみたり、村上作品慣れとして比較的明確な『ノルウェイの森』や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を入門書としてみるといいかもしれません。

エディプス・コンプレックスや思春期ならではの葛藤、『エディプス王』や『源氏物語』といった古典に惹かれる方は、ぜひ『海辺のカフカ』を手にとってみてはいかがでしょうか。

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