あらすじ

桜の森の満開の下のあらすじ・ネタバレ 感想や考察を徹底解説/坂口安吾

坂口安吾といえば「白痴」や「堕落論」など戦後日本で活躍した無頼派小説家の一人として知られています。

「桜の森の満開の下」は代表作の1つして数えられる短編小説です。

怪奇小説でありながら、幻想的で妖艶な美の描写は文章を読み進める上でとても心地よく感じられました。

また、所々にグロテスクな表現もあり、なんとも生温かい空気感のある作品です。

「美とは何か」という問いに、主人公の山賊の心情の変化を通して人間の本質を突き詰めていく、そんな作品です。

「桜の森の満開の下」とは?

1947年に雑誌「肉体」創刊号で発表された短編小説です。

現在は岩波文庫、講談社文芸文庫から文庫版が刊行されています。

世界観の奇怪さ、幻想的な美の表現は後世の様々な作家に影響を与えました

満開の桜は恐ろしいものとして捉えられ現代とは異なった審美感の世界が描かれており、坂口安吾の代表作との呼び声も高い作品です。

作者名 坂口安吾
発売年 1947年
ジャンル 奇怪小説
時代 江戸時代以前

坂口安吾のプロフィール

・坂口安吾1906〜1955年
・新潟県新潟市出身。
・東洋大学印度哲学倫理学科卒業。

戦前・戦後に活躍した「無頼派」を代表する小説家、随筆家、評論家です。

文学作品以外にも、歴史小説や推理小説など幅広い執筆活動を行いました。

今も駿河台にあるアンネ・フランセでフランス語を学び、フランス文学の翻訳家としての顔もあります。

また、囲碁、将棋の観戦記などの随筆も残しました。

【代表作】「風博士」「白痴」「堕落論」

桜の森の満開の下の特徴

幻想的で奇怪な世界観を説話形式の文体で語られています。

時代背景は江戸時代以前の日本で、現代では美の象徴である桜が不気味なものとして捉えられています。

主人公の山賊の心情の変化がつぶさに描かれています。

また、美しい女が狂気に陥り生首での人形劇を興じる様など、グロテスクな表現も含んだ異色作です。

桜の森の満開の下の主要登場人物

山賊 鈴鹿峠に住む男。都の人から金品を盗んで生計をたてている。
盗みに入った家の女房を連れ去って一緒に暮らしている。
山賊があまりの美しさから夫を殺し連れ去った女。
気が強くわがままな性格。
ビッコの女 以前に山賊が連れ去った女。
足が悪く、女中として山賊と女とともに暮らす。

桜の森の満開の下の簡単なあらすじ

山に住んで人々から金品を奪って暮らしている山賊は、ある日、盗みに入った家の女房の美しさに一目惚れし連れて帰る事にします。

しかしその女はわがままな性格でした。

賢くない山賊は女に言いくるめられて盗みや人殺しを犯します。

やがて山賊達は山から都に移住します。

これまでは櫛や着物を欲しがった女ですが、やがて人間の生首を欲しがる様になります

山賊は際限のない女の欲望に辟易し、山に帰ることにします。

道中、満開の桜の中を通った時に女が老婆の鬼に変わっている事に気がつきます

驚いた山賊は首を絞めて殺しますが、気がつくとそれは鬼ではなく女でした

女の顔におちた花びらを払おうと手をかざすと女の姿は消え、山賊も消えてしまうのでした。

桜の森の満開の下の起承転結

【起】山賊の暮らし

通りすがりの人から金品を奪って暮らしている山賊にも怖いものがありました。

それは「満開の桜」でした。桜の木の下にいるとなんとも不安な気持ちになり心が掻き毟られる様でした。

そんなある日、盗みに入った家でとても美しい女に出会います。彼は夫を殺しその女を連れて帰ることにします。

その女は美人ではありましたが気が強く、わがままで考えの浅はかなところがありました。

山賊の家には過去にさらってきた7人の山女が住んでいました。

すると女は足の悪いビッコの女を残して全ての山女を山賊に殺させてしまいます。

【承】女との生活

ビッコの女は女中として住まわせ、女はわがまま放題の暮らしを送り始めます。

山賊に命じて櫛や簪、着物などを盗んで来させます。

山賊は女が美しくなってゆくのを目の当たりにし、美とは一種の「魔術」なのだと悟ります。

女の美しさに心酔している山賊ですが不安な気持ちも抱いています。それは桜に対する感情に似ているのです。

女と暮らすようになって山賊は無知を恥じるようになります。

羞恥心から生じる不安を打ち消そうと知らないものへの対象を敵視する様になります。

山での生活に飽きた女は都に住みたいと言い出します。

山賊はそれを承諾します。ただ、一つ心残りがあります。

それは桜の花です。彼の心に芽生えた不安な感情の正体知らずにその場を離れる事はできないと考えました。

満開の桜の花の下でじっと座って耐えてみせることで不安を克服しようと心に決めるのです。

出発を急かす女に、桜の花が咲いてからと拘ります。

それに業を煮やした女は呆れて苦笑いを浮かべます。

それを見た山賊はその顔が頭にこびりついて離れなくなってしまいます。

初めて人から苦笑いを向けられたのでした。

3日後、山賊は桜の花の下に向かいます。

そこでもあの苦笑いの顔を思い出します。心を掻き乱され混乱した山賊は息も絶え絶えその場から逃げ去ります。

【転】都での暮らし

山賊と女、ビッコの女は都に住み始めます。

山賊は愚直に櫛や簪などを貢ぎましたが女は満足しなくなりました。

代わりに女が欲したのは人の首でした。

狂気の沙汰の女はその生首で人形遊びに興じるのでした。

腐った生首が脆く崩れていく様を見てけたたましい笑い声をあげるのでした。

一方、山賊は都での生活に馴染めないと感じていました。

都の人々からは散々馬鹿にされましたが、やがてそれにも腹が立たなくなりました。

退屈を感じ、山での生活を懐かしむ様になります。人を殺すことに何も感じなくなり、女の欲望の際限のなさにも辟易してきます。

そしてついに生首を持ち帰る事を断ります。

女は言いくるめようと躍起になりますが、山賊は家を飛び出してしまいます。

この状況から脱却する方法を考えながら森を彷徨い歩き、1本の桜の下に辿り着きます。

そこであの峠の桜の事を思い出し、森に帰る事を決断するのでした。

【結】帰郷

山賊が家に帰ると女は喜んで迎えました。

山賊は山へ帰る事を告げます。

突然の山賊の言葉に女は動揺し、涙ながらに自分も連れて行って欲しいと懇願します。

女の内心では山賊の郷愁が満たされれば再び都に連れ出す事ができると確信していました。

生首も諦めて山で暮らすという女の言葉を信じた山賊は希望に胸を踊らせます。

ビッコの女は都に残して二人は山へ向かいます。山賊は女をさらった日と同じようにおんぶをして山道を進みます。

気がつくと満開の桜の中に足を踏み入れていました。

すると女が老婆の鬼になってしまいます。

山賊は鬼を振り下ろし、絞め殺します。

我に返った山賊の目の前には鬼ではなく女の死体が横たわっています。

山賊は涙を流し、女の顔に落ちた花びらをとってやろうとしました。

すると女の体は消えて花びらになってしまいました。その花びらをかき分けた山賊も消えてなくなってしまいました。

桜の森の満開の下の解説(考察)

山賊は狼藉者ですが、無垢な心の持ち主です

桜の花を見て抱く心のざわめきの正体をみつけられないでいます。

複雑な心情を理解する事ができないのです。

女の登場は山賊にとってその正体を浮かび上がらせる手助けになります。

桜も女も山賊にとっては美しい存在です。

なぜそれらが恐ろしく感じるのか、山賊は美に対する考察をします。

女の美しさは「魔術」によって成立していると考えます。

一般的に魔術とは人を狂わせます。

美しいものに惹かれている心情こそ魔術に嵌っている状態であるという事です。

山賊は女や都の人と接する事でこれまでは経験したことのない劣等感や羞恥心といった感情を抱きます。

この不快な感情を払拭しようともがき苦しみます。

満開の桜という異世界に迷い込んだ山賊は「魔術」によって心を乱されます。

不安が心を支配し錯覚を起こして女を殺してしまうのです。そして山賊は「孤独自体」になることで、その悲しみを知るのでした。

桜の森の満開の下の作者が伝えたかったことは?

人間の心というものは本質的に孤独なものであるということを山賊の心情の変化を通じて表現したかったのではないでしょうか。

山賊は自らの心に生じる新しい感情を観察します。

不安や羞恥心、劣等感など不快な感情を抱えています。

これは人と関わる以上仕方のないことでもあります。

大切な人を失い「彼自らが孤独自体」という状況になって初めて不安から解放されるのです。

そこには人間の心に本質的な孤独がある事を意味します。

この救いのない孤独を見つめ、あるがままを受け入れる事で救われるという老師の思想が根底にある様に思います。

桜の森の満開の下の3つのポイント

舞台化

演出家の野田秀樹さんが本作などを下敷きにして「贋作・桜の森の満開の下」という戯曲化しています。

舞台化され妻夫木聡さんや天海祐希さんらによって演じられました。

映画化

本作を原作とした映画も制作されています。

監督を篠田正浩さんがつとめ、山賊役を若山富三郎さん、女役を岩下志摩さんが演じました。

三島由紀夫の評価

坂口安吾のことは三島由紀夫も絶賛しています。

同じ無頼派の旗手である太宰治と比較して「太宰を『甘口の酒』、坂口を『ジン、ウォッカ』と評しています。坂口安吾贔屓であったようです。

桜の森の満開の下を読んだ読書感想

美しいものに接した時の人の反応は様々でしょう。

ずっと見ていたい、自分のものにしたいと心惹かれていく反応が一般的でしょうか。

ですがその一方で、美は時として人を狂わせてしまう魔術を秘めている様にも思われます。

例えば三島由紀夫の「金閣寺」の主人公も憧れの存在に火を放ってしまいます。

美しいものとはその存在自体に意味はありません。

それを受け取る側の心の作用です。

この作用は複雑に絡み合って時としてこの話のように暴走してしまう事もあります。

自分の理解の及ばないものに恐れを抱き、攻撃をする。

現代の世の中でも世界中で同じような事が起こっている様に思われます。

桜の森の満開の下のあらすじ・考察まとめ

作品の中にあるメタファーを読み解く事の面白さもあるが、文章の洗練さ、描かれた世界観の奇怪でありながら艶やかさも感じる事ができました。

異様な魅力のある作品でした。

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