あらすじ

オツベルと象のあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/宮沢賢治

中学校の教科書にも載っている「オツベルと象」は、宮沢賢治の代表作の1つだと思います。

みなさんはどんな印象を持っていますか?

後味が悪い、不気味、怖い、そんな感想を持つ人が多い「オツベルと象」。

大人になるほど、物語の深みにはまって抜け出せなくなります。

まるで白昼夢のようなこの作品に、一体どのような思いが込められているのでしょうか。

また、白象が最後にさびしく笑った理由は何だったのでしょうか。

「オツベルと象」とは?

宮沢賢治が生前に発表した数少ない作品のうちの1つが「オツベルと象」です。

オツベルと象は、資本家(経営者)と労働者の話です。

より安い給料でたくさん働いて欲しいオツベル。

オツベルに騙されて過酷な労働環境で働かされ弱っていく、純粋でお人好しな白象。

だんだん弱っていく中で白象は、サンタマリアに助けを求めます。

すると1人の子どもが白象の前に現れて、紙と筆を白象に授けたのです。

作者名

宮沢 賢治

発売年

1926年

ジャンル

童話

時代

大正時代

宮沢賢治のプロフィール

明治末期~昭和初期(1896年~1933年)に活躍した作家で、主に詩や童話を創作していました。

岩手県花巻市(旧稗貫郡川口村)出身。

なお岩手県は、宮沢賢治が思い描いた理想郷「イーハトーブ」の舞台でもあります。

宮沢賢治の主な作品

「注文の多い料理店」「風の又三郎」「やまなし」「雨ニモマケズ」など。

地質学・動植物・天文学・宗教など様々な分野への関心があり、造語を作るのが得意でした。

高等農林学校を卒業後、花巻農学校で農民芸術の教師をしていた経歴があります。

そのことがきっかけで、実家は質屋・古着屋にも関わらず、宮沢賢治は農業の世界にはまっていきました。

オツベルと象の特徴

「オツベルと象」は、牛飼いの語りで物語が進んでいくのが特徴です。

そのため第一日曜、第二日曜ときて第五日曜まで日にちが空いていることから、牛飼いの動揺や戸惑いがうかがえるのが面白いところです。

また牛飼いは5音7音でリズムよく語っているところもあります。

「どうだ、そうしてこの象は、もうオツベルの財産だ」

「どうだ、そうして次の日から、象は朝からかせぐのだ」

などテンポよく話しているところから、牛飼いの愉快な様子などが分かります。

オツベルと象の主要登場人物

オツベル

大金持ちの地主(経営者)。ずる賢い。

白象

純粋で心優しく、お人好しな象。

十六人の百姓ども

オツベルが経営している仕事場の労働者。

牛飼い

物語の語り手。

オツベルと象の簡単なあらすじ

オツベルは16人の農民を従えている経営者で、お金持ちで贅沢な暮らしをしていました。

そこに1頭の白象がやってきます。

オツベルはなんとかしてこの白象を手に入れようと企み、言葉巧みに白象を騙すことに成功します。

その後は、白象に労働をさせる一方でご飯の量を減らしていきました。

弱りきった白象がサンタマリアに助けを求めると、急に現れた1人の子どもが、紙と筆を白象に差し出したのです。

白象は仲間に手紙を書き、その手紙を読んだ仲間の象が白象を助けにきて、最後に白象は「助かったよ」と、さびしく笑って言いました。

オツベルと象の起承転結

【起】オツベルと象のあらすじ①

(ある牛飼いの語りだし。第一日曜。)

オツベルはとても優秀な経営者で、学校ぐらいある大きな小屋に新式の稲扱器械を6台も持っていました。

そこで16人の百姓を働かせながら、お昼はビフテキや熱々のオムレツを食べていました。

ある日、1頭の白象がオツベルの小屋にやってきたのです。

百姓たちはびっくりして白象を見て見ぬふりしましたが、オツベルは違いました。

白象に興味がないフリをしながら、白象を手に入れるための演技をしていたのです。

そんなこととは知らない白象は、籾がパチパチ歯に当たるのを楽しんでいました。

そしてオツベルの「こっちに居たらどう?」という提案に乗ります。

【承】オツベルと象のあらすじ②

(第二日曜。白象を騙すオツベル。)

オツベルは上手く白象を自分のものにすることができました。

20馬力もある働きものの白象を手にいれたオツベルは凄い。

そんなオツベルは白象に「時計は要らないか?」と言って時計を与えます。

最初は象だから要らないと断っていた白象ですが、時計をつけると「なかなかいいね」と言って喜びました。

するとオツベルはすぐに「鎖もなくちゃだめだろう」と言って、100kgある鎖を白象の前足につけました。

次に靴を勧めるオツベル。

またも白象は、靴のあとに400kgある分銅を後ろ足につけらてしまいます。

やっぱり白象は気付かずに「なかなかいいね」と喜びました。

次の日には、時計も靴もなくなり残ったのは、鎖と分銅だけ。

それがオツベルの狙いとも知らず、白象はオツベルに頼まれた仕事を楽しそうにこなしていきます。

最初は10把の藁をもらっていた白象でしたが、8把、7把、5把とだんだん量が減っていったのです。

【転】オツベルと象のあらすじ③

(第五日曜。助けを求める白象。)

牛飼いは困惑したようにオツベルはいなくなったと切り出します。

白象は笑うこともなくなり、ときどき赤く鋭い眼でオツベルを見下ろしていました。

白象は3把の藁を食べながらサンタマリアに苦しいと助けを求めます。

それを聞いたオツベルは、白象に辛く当たったのです。

ある夜、白象は藁も食べずにふらふらと地面に座り込み「もう、さよなら、サンタマリア」と言いました。

すると月が「さよならだ?」と聞きかえし、仲間に助けて貰ったらどうだとアドバイスします。

白象はそれを聞いて、紙や筆がないと答えると赤い着物を着た1人の子どもが突然現れて、紙と筆を白象に渡しました。

山にいた象の仲間たちは、囲碁などをして遊んでいましたが、手紙を見ていっせいに立ち上がり吠えました。

議長の象が「オツベルをやっつけよう」と叫ぶと、他の象たちはそれに呼応したのです。

そして嵐のように林を抜けて、野原の向こうにオツベルの屋敷の黄色い屋根を見つけると、怒りが噴火しました。

【結】オツベルと象のあらすじ④

(助けられた白象と牛飼いの一言)

オツベルがカラスの夢を見ている昼下がり。

外からものすごい音が響いてくるので、農民たちは門の外に出て確認してみると、象の大群が向かってくるのが見えました。

あわててオツベルに知らせると、小屋の戸に丸太を置いて白象を閉じ込めろ、と冷静に答えたのです。

農民はオツベルの巻き添えをくらいたくないと、腕に汚れた白いタオルやハンカチを巻いて降参の意思を示しました。

象の群れがオツベルの屋敷につきましたが、塀は鉄とセメントでできていたので、なかなか越えられませんでした。

そのうち、象たちは仲間を台にすることを思いつきオツベルの屋敷の塀を覗くと、オツベルが飼っていた犬は気絶してしまいました。

オツベルはピストルを使いますが、象にはパチパチ当たるだけで効きません。

そして5頭の象がいっぺんに塀を越えると、オツベルはくしゃくしゃに潰されてしまったのです。

象たちが白象についている鎖や分銅を外してやると、白象は「助かったよ」とさびしく笑いました。

牛飼いが言いました。

「川へ入っちゃいけないったら」

オツベルと象の解説(考察)

オツベルと象には2つのポイントがあります。

それは、宮沢賢治が同年に「農民芸術概論綱要」をまとめていることと、物語を牛飼いが語っていることです。

1つ目のポイントは「農民芸術概論綱要」を童話版にしたのが、オツベルと象ではないかということです。

「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」

「いまわれらにはただ労働が 生存があるばかりである」

「詩人は苦痛をも享楽する 永久の未完成これ完成である」

これらは「農民芸術概論綱要」に記載されている文章です。

オツベルが死んでも幸福にならないことを知っているから、白象は最後にさびしく笑ったのではないでしょうか。

白象はオツベルの嘘(足かせをつけるために時計をすすめるなど)に騙される世間知らずでありながら、サンタマリアに祈る詩的な1面も持っています。

このことから、白象は無知なわけではなくお人好しなだけだということが分かります。

つまり白象は、オツベルの死=オツベルに使えていた者(百姓)は、労働すらなくなり死ぬことを理解していたんです。

白象の言ったセリフ「ほんとにぼくは助かったよ」とは、ぼくだけが真に助かったということを意味しています。

そしてお人好しな白象は、オツベルの死と農民(百姓)の死に心を痛めながらも、さびしく笑うという苦痛をも享楽していることに繋がります。

そこからオツベルは質屋・古着屋を営業している資産家の親、白象は宮沢賢治自身、百姓は岩手の農民、象たちは国柱会の人のメタファーではないかと考えます。

2つ目のポイントは、この物語を牛飼いが語っていることです。

牛飼いは牛を扱う人のことをさしています。

つまりオツベルと同じ立場なんです。

なのでしきりにオツベルを褒めています。

それが最後にオツベルは、白象を助けにきた象にやられて死んでしまったのです。

牛飼いは動揺もありながら、同じ轍を踏まないように考えているのではないでしょうか。

「おや(一字不明)、川へはいっちゃいけないったら」はそこに繋がっていると考察します。

この物語は牛飼いが近所の子どもたちに読み聞かせていると言われています。

しかし、私はこの一字不明に入る言葉は「牛」だと推測しています。

この牛飼いがオツベルと同じことを牛にしようとしていることが分かったから、牛は川に逃げたと考えるとしっくりきませんか。

オツベルと象の作者が伝えたかったことは?

宮沢賢治が伝えたかったのは、どんな立場の人でも他人を尊重しなければいけないということではないでしょうか。

オツベル(資本家、経営者)は、百姓や白象(労働者や奴隷)を労ることができなかったから幸福になれませんでした。

百姓(同僚)は白象(同じ立場の者)を見てみぬフリをしたから、仕事を失うはめになりました。

白象(純粋な者)は自分の楽しい気持ちを優先した結果、百姓や犬を苦しめるはめになるでしょう。

象たち(仏教)が白象(キリスト教)を助けるために、オツベルを殺すことが最善だったのでしょうか。

こういったことから、自分が良かれと思ったことでも他人を苦しめる結果になるかもしれないんだよ、という宮沢賢治のメッセージなのではないかと考えます。

オツベルと象の3つのポイント

ポイント①オノマトペ

宮沢賢治が得意としているオノマトペが「オツベルと象」にもたくさん登場します。

オノマトペとは擬声語や擬態語、擬音語などの実際にはない音を表すときの表現技法です。

「オツベルと象」に出てくるオノマトペ。

器械の音“のんのんのんのん”

象の鳴き声“グララアガア、グララアガア”

などがあります。

ポイント②色の表現が豊か

オノマトペに並んで表現の豊かさも有名な宮沢賢治。

「オツベルと象」でもその特徴がはっきり分かります。

“顔をまるっきりまっ赤にして”

“ぼうっと黄いろになり”

“白い象だぜ”

などがあります。

ポイント③沙羅樹の下

1つ目は、宗教的な意味合いを表していると考えられます。

サンタマリアに祈る白象はキリスト教。

沙羅樹の下にいる象たちは仏教。

宮沢賢治は妹トシが亡くなった際に、父親と信仰する宗教の違いで対立していました。

そうは言っても、宗教関係なく困っている人がいたら助けたい、という宮沢賢治の考えがあったんじゃないかと思います。

2つ目は、平家物語の「沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす」を意味しているのではないでしょうか。

からどんなに力を持ったものでもいずれは衰えるということの象徴。

オツベルと象を読んだ読書感想

世界の縮図ともいえる「オツベルと象」。

オツベルが死んだことによって誰か救われたかというと、根本的には誰も救われていないところに根深い問題があります。

百姓たちはオツベルが死んで仕事に困ることになるでしょう。

またオツベルの犬も世話をしてくれる人を失いました。

白象は、トラウマを抱えて生きていくことになります。

ハッピーエンドとは言えない展開に、国語の教科書のトラウマ作品に名を連ねるほどです。

デモだったり投票だったり、何か行動するときは先を見据えて動くことも忘れてはいけないと思います。

オツベルと象のあらすじ・考察まとめ

純粋で優しい白象が、ずる賢いオツベルに騙されて過酷な労働を強いられる話しです。

合計500kgの重りをつけられたまま働かされ、だんだんエサは減っていく。

最初は楽しんでいた白象も、立ち上がる元気もなくなり自分の死期を悟ります。

そんな白象がいよいよもうダメだと感じ、サンタマリアにさようならと声を掛けると、月から仲間に助けを求めたらどうか、と返事が返ってきたのです。

宮沢賢治は「オツベルと象」と同時期に発行した「農民芸術概論綱要」で“世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない”と記しています。

「オツベルと象」を読めば、どうやったら幸福になることかできるのかを考えるきっかけになると思います。

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