あらすじ 宮沢賢治

春と修羅のあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/宮沢賢治

映画「シン・ゴジラ」の冒頭シーンで、東京湾を漂っている無人のボート。

その中のテーブルには詩集「春と修羅」が置かれていました。

意味深な映像に釘付けになること間違いなしですが、なぜ「春と修羅」だったのでしょうか。

この「春と修羅」は宮沢賢治が書いた作品です。

「春と修羅」の内容を読みとくことで、その意味や宮沢賢治の内面が理解できるかもしれません。

「春と修羅」とは?

 

「春と修羅」は、大乗仏教の説く彼岸への憧憬(理想を目指す強い気持ち)と現世の業に絡みつかれた修羅としての自己の葛藤を表したタイトルになっています。

仏教において修羅とは、激しい感情や怒り、闘争などを表す用語です。

宮沢賢治は、法華経や国柱会の信者でもありコントロールできない感情を作品に込めたと思われます。

作者名

宮沢賢治

発売年

1924年

ジャンル

詩集

時代

大正時代

宮沢賢治のプロフィール

明治末期~昭和初期(1896年~1933年)に活躍した作家で、主に詩や童話を創作していました。

岩手県花巻市(旧稗貫郡川口村)出身。

なお岩手県は、宮沢賢治が思い描いた理想郷「イーハトーブ」の舞台でもあります。

宮沢賢治の主な作品

「注文の多い料理店」「風の又三郎」「やまなし」「雨ニモマケズ」など。

地質学・動植物・天文学・宗教など様々な分野への関心があり、造語を作るのが得意でした。

高等農林学校を卒業後、花巻農学校で農民芸術の教師をしていた経歴があります。

そのことがきっかけで、実家は質屋・古着屋にも関わらず、宮沢賢治は農業の世界にはまっていきました。

また妹のトシと仲が良く、トシの死を作品に残しています。

春と修羅の特徴

詩集「春と修羅」は、第1集〜第3集まで刊行されています。

宮沢賢治が生前に出版したのは第1集のみで、生前に唯一刊行された詩集でもまりました。

その中に春と修羅という題名の作品があり、“mental sketch modified”という副題が付けられていて、心象スケッチと訳されています。

作品の文字がうねっているように見えることから、宮沢賢治の内面と認識を表してます。

春と修羅の主要登場人物

 

おれ

宮沢賢治自身

修羅

阿修羅の略。六道の1つ修羅道に住む

仏法の守護神でありながら悪神でもある

農夫

岩手県稗貫郡(現 花巻市)の農民

春と修羅の簡単なあらすじ

春の景色とは反対に、宮沢賢治の心は修羅のように激しい怒りがあります。

「まことのことば(真実の言葉)」は失われ、雪どけした4月の土とは裏腹に重く沈んでいます。

鳥や太陽、イトスギの木に生命を感じながら、宮沢賢治の心象風景と現実の風景が結びついて二重に見えます。

農夫(他人)からは、本当に私(宮沢賢治)が見えているのでしょうか。

純粋な生命が存在しているのに、まことのことばは見当たらず自身の涙が土を濡らし、息をつけば白く、肺が縮まるのを感じます。

「この体が砕けて空に散らばれ」と思うと、イトスギは暗くかげり一面ににわか雨が降り出しました。

春と修羅の起承転結

【起】春と修羅のあらすじ①

仏教を信じる心は、鋼のように固いです。

しかし、その心からはアケビのツルのように澄んだ空の雲にまで届きそうなほど、よこしまな情念が広がっています。

(正午を知らせる金が鳴っていました。しかし、それよりも激しく太陽の光が琥珀のかけらのように降り注いでいます。)

4月の雪解けした穏やかな昼の中を葛藤を抱え歩いている私(宮沢賢治)は、1人の修羅です。

(目の前の景色は、涙でぼんやりとにじんでいます。)

【承】春と修羅のあらすじ②

ぶつかったり、ちぎれたりしている雲の隙間から澄んだ空が見えます。

清らかなガラスのように透明な風が吹き、糸杉の木が春の景色の中を一列に並んでいます。

その糸杉の林の陰で深呼吸すると、糸杉の隙間から山にはまだ雪が積もっていて光っていました。

「まことの言葉」は失われてしまい、自分の心を表すように空を飛んでいる雲はちぎれてバラバラに飛んでいきます。

穏やかな4月の景色の中を、心の定まらず歩いている私(宮沢賢治)は1人の修羅です。

【転】春と修羅のあらすじ③

(輝いている雲は流れて、どこからか春の鳥の鳴く声が聞こえます。)

太陽が雲に覆われる中、私は糸杉の林の中を歩いています。

修羅のような私(宮沢賢治)の心は、樹林と共鳴しながら林の合間から見える空は、雲が群れあっていました。

その手前には、糸杉の枝が悲しそうに生い茂っています。

現実の景色と宮沢賢治の心象風景が重なって、心ここにあらずといったような状態です。

糸杉の枝の先から稲光が走り、カラスが飛びったって行きました。

【結】春と修羅のあらすじ④

(澄み切った空気の中を糸杉もシンと天に向かって立っています。)

太陽の光を浴びて金色になった草地を歩いてくる人がいました。

ミノをまとった農夫は、私(宮沢賢治)を見ています。

「本当に農夫は見えているのだろうか」

まぶしいほどの光を放っている空から見たら、まるで海の底のよう。

(悲しみは青々と深い)

糸杉は静かに揺れて、鳥は青空の中を飛んでいきます。

(まことの言葉は宮沢賢治の中になく、修羅のような私の涙が土に

落ちました。)

空に向かい吐いた息は白く、肺は縮まる感じがしました。

(私の体、空にバラバラに散らばってしまえ)

イチョウの枝の先が光って、糸杉は暗く影を落とし、にわか雨が降り出しました。

春と修羅の解説(考察)

妹であるトシの死を乗り越えようとする宮沢賢治。

法華経信者でもあった宮沢賢治は、死というものを輪廻と捉えていたと思います。

本来は悲しいものではないと説く仏教でも、宮沢賢治の心は悲しみと信心の心の間で揺れ動いてたのでしょう。

雪解けした穏やかな4月の春の景色とは異なり、自分の心は重く沈んでいるということを表しているように思います。

探してもどこにもいない、最愛の妹。

同じように、「自分も違う世界に行けたらいいのに」と思う宮沢賢治の心の声が聞こえるようです。

春と修羅の作者が伝えたかったことは?

仏教の教えと違って宮沢賢治の気持ちは、俗物に囚われています。

そのことに対する葛藤や嘆きを描いた作品と言えます。

自分の本当の気持ちを言えないでいる宮沢賢治にとって、まことの言葉はどこにもなく深く悲しく、同時に苛立ちさえ覚えていることを伝えたかったのではないかと推測しました。

春と修羅の3つのポイント

ポイント①難解な表現

アケビのツル→細く他の草木に絡まりながら伸びていく性質がある

諂曲→自分の気持ちを曲げて人に媚びへつらうこと

聖玻璃→清らかなガラス

Zypressen→イトスギ(糸杉)の木

光素(エーテル)→アイエーテル(神の領域の空気)に対して下層の空気のこと

玉髄→鉱物。美しい宝石のこと

喪神→体から心が抜けた状態になること

けら→蓑(ミノ)

あまり使わない言葉も出てきますが、見ているだけで宮沢賢治の葛藤は伝わってきます。

ポイント②作品の見た目

れいろうの天の海〜ひのきもしんと天に立つころ

の間の文字は、波打つように揺れていて宮沢賢治の葛藤や動揺、歯痒さなどの心の内を表しています。

ポイント③表現が綺麗

鉱物や宗教、天文学など様々なことに興味を持っていた宮沢賢治は、色彩豊かな表現を得意としています。

特に目に見えない風を、ガラスのように透き通った「聖玻璃」と表現するなど、ものの捉え方が独特で面白いです。

春と修羅を読んだ読書感想

「銀河鉄道の夜」や「雨ニモマケズ」などで、自己犠牲の素晴らしさを表現している宮沢賢治。

その宮沢賢治は、心の葛藤でさえも美しく見えます。

宮沢賢治自身は、仏教の教えと異なる自分の心持ちが許せなかったのかもしれません。

また、妹であるトシの死を受け止めきれずにいたのだと思います。

その苦悩は、現代の私たちにも通じるものがあり、表現こそ難解ですが心に刺さるものがあります。

春と修羅のあらすじ・考察まとめ

春の穏やかな風景とは異なり、宮沢賢治の気持ちは鬱蒼と生い茂った林やドロドロの湿地のように重く暗いものです。

雲は絶え間なく動き、千切れたり他の雲と交差したりしていました。

糸杉の林を歩いている自分は、現実の風景と心象風景が重なって見え、心ここに在らずといった感じです。

この世界はもう現実のものか分からず、他人から見えているのかさえ判断つきません。

「春と修羅」では、宮沢賢治の葛藤と苦悩、苛立ちが伝わってきます。

「1人の修羅なのだ」という言葉から、良き理解者だった妹が亡くなったことにより孤独を抱えていたようにも思えます。

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