あらすじ 今村夏子

星の子のあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/今村夏子

​​「新興宗教」という扱いが難しい課題が物語の主軸に据えられている「星の子」は、興味を惹かれる人も多く話題となりました。

新興宗教にのめり込んでいく両親とその子供の生活がリアリティーをもって描かれています。

タブー視されがちな世界を純粋な子供の視点で綴られています。

芥川賞候補にもなった作者初の長編小説に期待が膨らみます。

「星の子」とは?

両親が新興宗教にのめり込んでいく環境の中で思春期の少女が「外の世界」との軋轢に戸惑いながら生きていくストーリーです。

当たり前の事が周囲にとっては異質なものという状況を戸惑いながらも、受け入れるしかない幼い少女。

どう解釈するかで賛否が分かれる作品だと思います。

 

作者名

今村夏子

発売年

2017年

ジャンル

長編小説

時代

現代

今村夏子のプロフィール

1980年生まれ 広島県出身

大阪の大学を卒業後、清掃員などのアルバイトを転々としていました。

ある日、「あしたは休んでください」と職場の人に言われます。

帰宅後、「小説を書こう」と思い立ったといいます。

処女作の「あたらしい娘」が太宰治賞を受賞します。

その後も「こちらあみ子」で三島由紀夫賞を受賞する順調な作家人生を歩み出します。

星の子を含む2作品で芥川賞候補となり、「むらさきのスカートの女」で受賞しました。

2013年に結婚し、娘と夫と3人で大阪に住んでいます。

星の子の特徴

星の子を読んでいて気がつくのは会話文が多いという事です。

ですからテンポ良く読み進める事ができます。

また、そのシーンの雰囲気を会話の機微によってより鮮明に感じる事ができます。

言葉では表していない会話の中に潜む微妙な感情まで想像する事ができる様に書かれています。

星の子の主要登場人物

林ちひろ

主人公の中学3年生の女の子。幼い頃は体が弱く、それが要因で両親は新興宗教にはまっていく。

お父さん

元々は損害保険会社のサラリーマン。職場の同僚に勧められ入信する。

なべちゃん

ちひろの宗教外での数少ない友達。容姿はいいがきつい性格の持ち主。

星の子の簡単なあらすじ

両親と姉の4人家族のちひろは幼い頃から病弱でした。

様々な治療を試みますが効果がでず、悩んだ末にたどり着いたのが「金星のめぐみ」という怪しげな水でした。

快方に向かったちひろをみて両親は新興宗教にのめり込んでいきます。

中学生になったちひろは周囲からの反応で自身の境遇に違和感を感じ始めます。

好きになった人から拒絶され、それでも現状を受け入れるしかない思春期の女の子が葛藤するお話です。

星の子の起承転結

【起】不思議な水

ちひろは損害保険会社に勤める父と専業主婦の母、5つ上の姉の4人家族です。

幼い頃から病弱で体のあちこちに湿疹ができてそれが痒くてよく泣いていました。

両親は様々な治療を試みましたが効果はありませんでした。

ある日、父が会社の人から「金星のめぐみ」という水を持ち帰ってきました。

その水を湿らせたタオルで湿疹をこする様にすると治るというのです。

藁にも縋りたい両親は試してみます。

結果としてちひろの容態は改善していきました。

これを機に食事療法など様々なメソッドを生活に取り入れていきます。

信じ込んだ両親はこれ以降「新興宗教」にのめり込んでいくことになるのです。

この水を紹介したのは落合さんという父の会社の同僚でした。

家族でその家にいくことになりました。

落合さんは水を浸したタオルを頭に乗せるだけで神秘的な力が体に良い影響を与えると指南します。

落合さんにはひろゆき君という息子がいました。

彼は話すことができないので姿を現しませんでした。

母の弟の雄三おじさんが新興宗教に心酔する両親を洗脳から解こうとある企てをします。

それは家に備蓄されていた「金星のめぐみ」を気づかれない様にただの水に入れかえるというものでした。

姉の協力を得て雄三おじさんの企ては成功します。

2ヶ月後、その事実を両親に伝えます。

効果を実感して使用していた両親は激昂して雄三おじさんを追い返しました。

姉はそれで両親の目が覚めることを期待して協力したのですが逆効果だったと肩を落としてしまいます。

【承】小学生のちひろ

小学生になったちひろはあまり友達ができませんでした。

ちひろの家の事情を知った親から仲良くする事を咎められていたのでしょう。

それでも小学4年生の頃に背が高くて美人な転校生の渡辺さんと仲良くなります。

帰り道が同じ方角だったので次第に打ち解け、なべちゃんと呼ぶような仲になりました。

ある日、好きな人の話をしていてちひろは西条くんが好きだと教えてあげました。

ところが2週間後、なべちゃんと西条くんは付き合っているという噂が広まっていました。

それ以降、気まずくなりなべちゃんとは話さなくなりました。

ある日、公民館の視聴覚室で「ターミネーター2」見る機会がありました。

ちひろはそこに出ていたエドワード・ファーロングという俳優に一目惚れをします。

その衝撃の出会い以降、クラスの男子が全員ブサイクに見えるようになりました。

西条くんも、ほとんどの女子も先生も、そして誰よりも自分自身が最も醜く感じるようになってしまいました。

その事を両親に相談すると目薬と紫色のふちの眼鏡をかけるように言われました。

これは落合さんからの勧めでした。

突然、なべちゃんに「なにそのめがね?」と2ヶ月ぶりに話しかけられました。

それをきっかけに再び一緒に帰る事になります。

両親に相談した症状をなべちゃんにも話しました。

するとなべちゃんは面白がって話を聞いてくれ仲直りができました。

それ以降症状は改善していきます。

ちひろが小学5年生の頃、高校1年生の姉はあまり家に帰らなくなっていました。

「水入れ替え事件」以降もずっと新興宗教に対して拒否反応を示してきました。ある晩、両親が寝静まってから姉は帰宅しちひろを起こしました。

今付き合っている人といつか結婚するのだといいます。

そしてその晩以降、姉は家に帰らなくなりました。

お父さんは勤めていた会社を辞め、支部長に紹介された仕事をしていました。

家は4回引越し、お母さんの身なりはみすぼらしくなっていきました。

ある日、ちひろあてに「スズキくん」から電話がかかってきます。

受話器をとるとかけてきたのは声が出ないと言っていた落合ひろゆきでした。

本当は声を出す事はできたのでした。

そして高圧的な口調でちひろを呼び出し帰りがけにキスをしようとしてきた事がありました。

ちひろなんとか逃げ帰ってきました。

【転】中学生のちひろ

ちひろが中学3年生の春、新任の南先生が赴任してきました。

南先生は和製エドワード・ファーロングと言えるほどの美男子でした。

ちひろは南先生の似顔絵を何枚も描きました。

それはクラスメイトも知るところとなっていました。

なべちゃんは同じバスケ部の新村くんという男の子と付き合っていましたが、「バカだから」という理由で別れたといいます。

新村くんの方は未練があるらしくなべちゃんとの仲を修復しようと懸命でした。

なべちゃんは卒業文集の編集委員で、放課後も作業に追われていました。

ちひろが手伝いをしていると新村くんもやってきて3人で教室に残っていました。

しばらく作業に没頭していると既に外は真っ暗でした。

そこへ南先生がやってきて早く帰るように促します。

新村くんが車で送って欲しいとねだると、南先生は渋々了承してくれました。

南先生の車の助手席に座れてちひろは有頂天です。

1番近いのはちひろの家でした。

近所の公園に到着しお礼をいって降りようとすると南先生が制しました。

公園ではちひろの両親が頭の上にタオルを乗せてそこにペットボトルから例の水を注ぎあっていたのでした。

それを見た南先生は不審者だと思い、その場を立ち去るのを待ってからちひろに早く帰るようにいいつけました。

帰宅後、ちひろがふさぎ込んでいると両親は体調が悪いのかと心配して、頭の上にタオルをのせて水をドバドバかけてくるのでした。

この時、ちひろはひろゆきの気持ちがわかるような気がしました。

きっと誰とも口を聞きたくなくなってしまったのだろうと。

ひろゆきから電話がきて呼び出されたのはちひろだけではありませんでした。

誰かが親に告げ口すれば、両親の耳に入らないわけがありません。

本当は話すことができる事を両親は知っているのです。

そしてばれていることもひろゆきは分かっているのだろうと思いました。

翌日、ちひろは昨日公園にいた不審者は自分の両親だと南先生に告白します。

すると南先生の目の奥がぽっと明かりが灯った様に感じ、顔がみるみる赤くなっていきました。

ちひろはこわくなって「うそです」いってその場を立ち去りました。

ちひろは南先生への気持ちを振り切る為に最後の1枚を書き上げたらそれで終わりにしようと心に決めました。

ホームルームの時間に描いているとそれが南先生にばれて怒鳴られます。「

変な水もしまえ、学校は宗教を勧誘しにくるところではない」と皆の前で叱責されます。

傷ついたちひろは涙を流します。

なべちゃんと新村くんはなぐさめて一緒に帰り、肉まんをおごってくれました。

【結】研修旅行

一泊二日の研修旅行の日がやってきました。

ちひろは家族3人で集合場所に向かいました。

そこには同級生の春ちゃんも来ていて、信者ではない高校生の彼氏を連れてきていました。

研修所につくと講堂に集められ「交流の時間」が始まります。

くじ引きでペアになった参加者とお話をして交流を深めるという時間です。

お昼と瞑想の時間を挟んで午前と午後の2回行われました。

ちひろの2回目の相手はツダさんというチャラついた若い男性でした。

彼は春ちゃんの彼氏の様に非信者でした。

ツダさんは信者のおばあさんに30万円貰う代わりに参加を了承したのでした。

次は「宣誓の時間」です。

抽選で選ばれた人が大勢の前で将来の夢などを発表する時間です。

「ラオスに学校を建てます」など続々と宣誓が行われていき、春ちゃんの彼氏の番が来ました。

「僕が好きな人が信じているものを知るために来た」と話し始めます。

「信じているものがどんなものかわかるまでここに来たいと思います」と締めくくり喝采を浴びました。

お風呂から上がると両親と久しぶりに再会します。

そして星空を見に行こうと誘われます。

お母さんの知っている特別な場所まで夜道を歩いて向かいます。

家族3人で星空を眺めながら話をしているとちひろは流星を見ました。

両親は見逃してしまい、見られるまで帰らないと言い出します。

その後もちひろは何度か見つけますが、両親は見えないと言い続けます。

そしてちひろを強く抱きしめるのでした。

その夜3人はいつまでも星空を眺め続けたのでした。

星の子の解説(考察)

家族が宗教にのめり込む事でちひろの生活には様々な影響がでてきます。

物心がついてくると人間関係にも影響を及ぼす様になります。

宗教にのめり込むあまり経済的にも困窮していきます。

宗教の外にいる人から見ればそれは不幸な面が目に付きますが、ちひろは当たり前の事として生きています。

それが要因で他者から拒絶される事も経験していますが、最後までそれを否定する事はありません。

ラストシーンの解釈はとても難しいと思います。

それでも家族は一緒にいるという感動的なラストシーンと見る事はできます。

一方で両親にしっかり抱かれたちひろはこの家族から逃れる事ができないとも解釈できます。

そしてどちらが幸せなのかは判断でしていない点が面白く読者に想像力と考えるきっかけを与えていると思いました。

星の子の作者が伝えたかったことは?

「宗教2世というのは不幸なことなのか」と問いかけられている様に感じました。

それは家族3人で星を眺めているシーンをどう解釈するかで答えは変わってくるとおもいます。

家族の絆の強さを訴えるものと理解する事もできます。

他方で新興宗教への信心の強さがその絆を支えているともとらえられます。

また、このシーンには姉はいません。

絵に書いたような幸福な家庭というのは存在しない。

必ず何かしら事情は孕んでいるものです。

それでも家族でいる事が幸せなのか、姉のように離脱する事が幸せなのか。

それは当事者しか決められない事かもしれません。

星の子の3つのポイント

ポイント 芦田愛菜主演で映画化

監督は大森立嗣さん、ちひろを芦田愛菜さん、お父さんを永瀬正敏さん、お母さんを原田知世さんと豪華なキャストで映画化されています。

2020年10月に公開されました。

ポイント もう一つのラスト

筆者は当初、星空を眺める家族の背後で海路さんと昇子さんが草むらに隠れて、ちひろはそのまま教団にとりこまれてしまうのではないかというラストを想定していたようです。

「家族」を強調したかったので変更したとの事です。

文庫本に収録されている筆者の対談で明かされています。

ポイント 宗教2世問題

社会問題となっている宗教2世の問題は様々なメディアでも取り上げられています。

テレビ番組で特集やドキュメンタリーなどが制作されてその現実を伝えています。

身近な問題なので感心を持って理解する事も必要かもしれませんね。

星の子を読んだ読書感想

宗教2世の問題はとても身近な事だと思います。

どう接したらいいのかと考えたことがある人が大半なのではないでしょうか。

なべちゃんや新村くんのように理解した上で普通に接する人、南先生のように攻撃する人など、正解のない問題は一筋縄ではいきません。

気持ちを共有する事ができないので主人公に対して感情移入はできないのですが、同情心とも違う奇妙な感情を抱かせる作品だと思いました。

星の子のあらすじ・考察まとめ

物語の視点が宗教2世の中学3年生の思春期の女の子の視点で描かれて居る点が面白いと思います。

主体的に盲信しているわけではなく、生まれ育った環境がそうだったからという理由で入信しています。

当然の事が周囲からは異端な行動として拒絶されるという事に対する反応がとてもリアルに描かれていると思います。

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