あらすじ エドガー・アラン・ポー

黒猫のあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/エドガー・アラン・ポー

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オーディオブックの魅力や使い方を徹底解説

ペットを家族の一員として扱う人が多い昨今。

大切に扱う人もいる一方でぞんざいに扱う人も存在します。

けれど、もしも彼らをぞんざいに扱ったら自分にも不吉なことが起こってしまうかも。

ポーの書いた「黒猫」はそんなことを思い浮かばせます。

エドガー・アラン・ポーが書いた「黒猫」(The Black Cat)は「モルグ街の殺人」などに並ぶ彼の代表作。

語り手の狂人さ、黒猫の不気味さ。

かつて最後のページを読んだときに寒気がしたことを覚えています。

その不気味さがくせになりどんどんページを読み進めたことも。

この記事ではそんな「黒猫」のあらすじ、ネタバレから感想・考察まで徹底的に分析していきます。

「黒猫」とは?

 

「黒猫」はある男が自身の罪を書き記すという形式で進んでいく、ゴシック風の恐怖小説です。

この語り手は、ある大きな罪により牢屋で裁きを待つだけの身。

そうなるにいたった、経緯を告白してくれる男。

読者はその男の告白につきあう形になります。

その語り手からにじみ出る狂気や、状況描写の巧みさにより、読後にゾッとする心地になることは間違いありません。

作者名

エドガー・アラン・ポー

発売年

1843年

ジャンル

恐怖小説

 

エドガー・アラン・ポーのプロフィール

エドガー・アラン・ポーは1809年から1849年まで生きた、アメリカ合衆国を代表する小説家であり詩人です。

俳優の両親のもとに生まれたポーですが彼の両親は幼いころにはいなくなり、アラン家の養子として育ちます。

ですが次第に養父といざこざが起こり、ついには勘当されてしまいます。

大学、士官学校共に中退したポーは自分の作品を投稿し始めます。

様々な作品を出し、高く評価された作品もありました。

また、雑誌の編集者として働き、雑誌の創刊も目指しました。

しかし、報酬が不十分だったりと生活は苦しかったようです。

愛する人と死に別れることもありました。

ある日、泥酔の状態で発見されたポーはそのまま死去し、40歳の短き生涯を閉じます。

今でこそアメリカ合衆国を代表する作家であるポーですが、彼が先に評価されたのはヨーロッパの方。

アメリカ合衆国において彼が評価されるのは死後一世紀を待つことになります。

そうして彼は多くの作家に影響を与えることになります。

日本の有名な推理作家である江戸川乱歩は、ポーの名前をもじったペンネームなんですよ。

 

エドガー・アラン・ポーの代表作

 

「モルグ街の殺人」

ポーの作品としてまず挙げたいのは「モルグ街の殺人」。

史上初の推理小説といわれる短編小説です。

この作品の主人公C・オーギュスト・デュパンは探偵の原型ともいわれる人物。

シャーロック・ホームズにも影響を与えました。

語り手の「ぼく」はデュパンに魅せられて、一緒に同居する仲になります。

そんな彼らはある日の夕刊に載せられた殺人事件に興味を持ちます。

そしてその難解な殺人事件を解決に導いていきます。

「大鴉」

「大鴉」は小説ではなく詩になります。

ポーの詩人としての才能が発揮されている作品です。

夜に訪れた鴉との問答が繰り広げられていき、だんだん主人公は狂気へと落ちていきます。

秀逸な日本語訳はたくさん出ているのですが、この作品は原文を読むことをお勧めします。

繰り返される「Nevermore」が、心になにかを訴えかけます。

「アッシャー家の崩壊」

ポーのゴシック風の幻想短編小説。

語り手「わたし」は旧友のアッシャーに誘われ、彼の棲む屋敷を訪ねます。

病床にいるアッシャーと彼の妹のマデライン。

「わたし」はアッシャー家に滞在し、様々な不思議な現象を経験します。

そして、最後にはアッシャー家は崩壊するのです。

 

黒猫の主要登場人物</h2〉

 

わたし

この物語の語り手。次の日に死ぬことが決定しています。

プルートー

かつて「わたし」が飼っていた黒猫。とても「わたし」に懐いていたのですが・・・。

胸のあたりが大きな白い斑点におおわれている猫。プルートーが死んだ後に「わたし」に飼われます。名前は作品中では出てきません。

 

黒猫の簡単なあらすじ

 

明日死を迎える男は自分の人生について書き記すことにしました。

彼はかつては動物を愛し、妻と共にたくさんの動物と一緒に暮らしていました。

特にプルートーという黒猫は彼の良き友人でした。

しかし、男は酒を飲むようになり次第に気性が荒くなっていきます。

プルートーに残虐な行いをした男はプルートーを失い、代わりに一匹の猫に出会います。

しかしその猫こそが、男に破滅をもたらすのでした。

黒猫の起承転結

【起】黒猫のあらすじ①動物を愛していた「わたし」

明日死を迎えることになった「わたし」は死ぬ前に自身のことを書き記すことを思いつきます。

それは「わたし」を破滅に追い込んだ恐怖に関する出来事。

他の人間にとっては、他愛のない怪談話ととられるかもしれない悪夢の話です。

「わたし」は幼いころから動物が好きでした。

子供のころから動物と過ごし、彼らへの愛を深めていた「わたし」は大人になって.さらに動物たちの愛情をつのらせます。

若くして得た妻との暮らしでも動物たちと暮らしていきます。

小鳥、金魚、犬、ウサギ、子サル、猫。

たくさんいる動物の中で.特に「わたし」が仲良くなったのは黒猫のプルートーです。

黒猫は魔女の使い魔と称されることがある利口な動物です。

冥界の王の名を持つその黒猫は.とても立派で利口な猫。

「わたし」はプルートーに自ら食べ物を与えてさえいました。

そして黒猫プルートーも「わたし」にとても懐き、どこに行くにもついていきました。

数年の間、2人はとても仲の良い友達だったのです。

【承】黒猫のあらすじ②酒に溺れて…

黒猫プルートーをはじめとする動物たちと暮らして数年が経ちました。

その間に、「わたし」によくない変化が表れます。

数年の間に大酒飲みになった「わたし」は酒に溺れるようになり、性格もまるっきり変わってしまったのです。

幼いころの「わたし」はおとなしく思いやりのある子でした。

しかし、酒を飲んだことによりどんどん気難しく、怒りっぽい性格になってしまったのです。

大切にしていた妻にも、動物にも暴力を振るうようになっていきました。

それでも最初のころは、仲良しの黒猫プルートーにだけは乱暴な行いはしませんでした。

しかし、ある日プルートーに乱暴な行いをし、軽い傷を負わせられた「わたし」。

酒を飲んで感情がたかぶっていた「わたし」は、残忍極まりない仕打ちをプルートーに行います。

プルートーの片目を、根こそぎえぐったのです。

黒猫の傷は癒えましたが、片目はなくなったまま。

そんなひどいことをされたプルートーは当然、「わたし」に対しておびえるようになります。

仲良しだった黒猫のプルートーの自分におびえる姿を見て悲しく思う「わたし」。

ですがしだいに、その悲しみは苛立ちへと変わっていきます。

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オーディオブックの魅力や使い方を徹底解説

さらに「してはいけないことをしたい」という、天邪鬼な気持ちが生まれていきます。

彼は悔いながらも、黒猫の首を縄で縛り木の枝につるして、縛り首にしました。

自分は絶対に許されないことをしている、そうわかりながらも黒猫を殺したのです。

 

【転】黒猫のあらすじ③猫との出会い

 

黒猫プルートーを殺した夜、「わたし」の家は火事になりました。

命だけは助かりましたが、家も家財道具も全てを失うことになったのです。

その次の日、「わたし」が焼け跡に行ってみるとたくさんの人の群れが。

一カ所だけ焼け残っていたカベのまわりに人があつまっていたのです。

漆喰を塗りなおしたばかりだから焼け残っていたのであろうそのカベ。

カベを見たとき「わたし」は大きな驚きにみまわれます。

首に縄まで焼き付いた、巨大な猫の姿が焼き付いていたのです。

猫の姿が焼き付いた合理的な理由を考え出した「わたし」ですが、心は晴れません。

「わたし」はプルートーを失ったことを残念に思い、代わりの猫を探すようになりました。

そして「わたし」は代わりの黒猫を見つけました。

白い斑点がある以外はプルートーにそっくりなその黒猫を、「わたし」は引き取ることにしました。

しかし、この黒猫が「わたし」を破滅に導いていきます。

【結】黒猫のあらすじ④殺人、そして

黒猫は「わたし」に強くなつき、どこまでも付きまとうようになります。

自分で探し求めて引き取った黒猫を、「わたし」はしだいに憎むようになりました。

この黒猫はプルートーと同じように片目がなかったことも嫌うことになる理由でした。

何より黒猫の白い斑点が絞首台に見えた、それが「わたし」の精神を強く揺さぶったのです。

かつての自身の行為への嫌悪と恐怖に黒猫に手は出さなかった「わたし」。

しかし、ある日地下室でとうとう黒猫を殺そうとします。

そしてそれをとめた妻を、怒りに任せて殺してしまいます。

妻の死体の隠し場所を考え、地下室のカベに塗りこめることを思いついた「わたし」。

死体を処理し、気づけば黒猫がいないことに気づいた「わたし」は久しぶりの安眠を得ます。

事件を調べに来た警察に対しても落ち着いた態度を示していた「わたし」は、ここで天邪鬼な気持ちを発揮させてしまいます。

妻の死体を隠していたカベを叩いてしまったのです。

そこから聞こえたのはこの世のものとは思えないような声。

警官が取り壊したカベにあったのは妻の死体

そして彼に破滅をもたらした、黒猫の姿があったのです。

 

黒猫の解説(考察)

 

この作品には二匹の黒猫が出てきます。

「わたし」が眼を取り出して縛り首にしたプルートー。

白い斑点を持ち、「わたし」を破滅の道におとしいれた黒猫。

この二匹の猫によって狂っていく男の様子が、巧みに描かれています。

とはいえ、元々酒を飲む悪癖で先に虐待したのは「わたし」の方です。

自覚していたのだから酒を抑えるのが彼のすべき最善手でした。

それができなかったことこそ天邪鬼の精神といってしまえるかもしれません。

彼の末路は、自業自得といってしまえばそれまででしょう。

二匹の猫の類似性が印象的ですが、他にも印象的な部分はいくつかあります。

新しく塗られたことで焼かれずに残った漆喰の壁と、漆喰を塗ったばかりだったため死体を隠すことができた地下室の壁。

罪を犯していないのに縛り首にされたプルートーと、罪を犯して縛り首にされた「わたし」。

最初に飼っていた黒猫の名前が、冥界の王と一緒だったのも気になるところです。

かの黒猫が、プルートーがつかわした冥界の使者だったのかは正直なところ分かりません。

プルートーの代わりを求め探していたならば、似たような猫を見つけたのは特に不思議ではありません。

白い斑点が絞首台に見えたのは、「わたし」の思い込みである可能性の方が大きいです。

カベから聞こえた声も、死体の空気が抜ける音だったかもしれません。

科学的に証明できることの可能性が高いのです。

ですが、そう言い切るにはあまりにも因果を感じてしまいます。

狂人の思い込みなのか、黒猫の復讐なのか。

その不気味さこそがこの作品の魅力なのかもしれません。

黒猫の作者が伝えたかったことは?

 

天邪鬼な精神は恐ろしい、それこそが作者の伝えたかったことなのかもしれません。

「わたし」は自分のしていることは「いけないこと」だと認識していました。

酒を断つ決断をしていれば、プルートーの様子を見て心を改めていれば。

もっと違う結末があったはずです。

しかし、してはいけないことをしてしまうという天邪鬼な精神は珍しいことではありません。

この物語の「わたし」は架空の人物というには現実感があります。

だからこそ、より不気味に映ってくるのでしょう。

 

黒猫の3つのポイント

ポイント①翻訳が多い

ポーは世界中で読まれ、日本語の翻訳もたくさん出ています。

「黒猫」はポーの代表的作品なので、とりわけ翻訳が多いです。

日本語の特徴の一つは、一人称や語尾がたくさんあるということ。

同じ作品でも、違う翻訳を呼ぶことで印象はまるきり異なってきます。

読み比べてみるのも楽しいものですね。

ポイント②「天邪鬼」

「わたし」は天邪鬼の精神によって黒猫を殺し、天邪鬼の精神によって罪を発覚させました。

この天邪鬼の精神について詳しく説明しているポーの作品があります。

その名もずばり「天邪鬼」(原文では「The Imp of the Perverse」)。

天邪鬼の精神とは何かについて詳しく説明されています。

どういうものか共感できる人も多いはず。

ポイント③神話の神々

「黒猫」に出てくるプルートーの名前はローマ神話の冥界の神の名前です。

ギリシャ神話におけるハデスという名前の方が親近感のある人はいるかもしれません。

物語の結末を考えると、とても意味深な名前です。

西洋文学において、キリスト教やギリシャ・ローマ神話の影響力は大きなものです。

知識が多少でもあると、また違った読書感が味わえるかもしれません。

黒猫を読んだ読書感想

 

ポーと初めて出会ったのは大学生のころ。

大学の講義で出てきて、気になって読んだのがきっかけでした。

改めて読み返すと、漆喰の壁の描写や猫の名前と伏線がしっかりちりばめられていると感じます。

最後の死体と猫の描写は何度読んでもゾクゾクしますね。

「わたし」の末路に関しては自業自得もいいところだというのが正直なところです。

元々は優しい性格だったというのは、虚しさも感じます。

「黒猫」は狂人の妄想だったのか、黒猫の復讐劇だったのか。

私個人としては復讐劇ではないかと思えます。

猫と人は祟るものと、日本でも言いますから。

 

黒猫のあらすじ・考察まとめ

 

「してはいけないことをしたくなる」天邪鬼の精神。

「わたし」は自分に罪があるとわかっていたからこそ狂気に落ちていったのかもしれませんね。

冒頭で「わたし」が言っているように彼におとずれたことは説明のつくことなのかも。

けれど本当に、黒猫の復讐なのではないか?

そう思わせるほどの迫力がひしひしと感じられます。 

だからこそこの作品は今でも愛される、恐怖小説なのでしょう。

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