あらすじ 夢野久作

瓶詰の地獄のあらすじとネタバレ 読書感想から考察まで徹底解説/夢野久作

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オーディオブックの魅力や使い方を徹底解説

あなたは極限の状況下でも、自分の欲望を抑えられますか?

例えば無人島に取り残されて一生ここで暮らすかもしれないという状況になった時、どのような行動に出るのでしょう。

今回紹介する「瓶詰の地獄」の舞台は、無人島です。

幼い兄と妹だけの環境で、二人はある罪を犯してしまいます。

そのような環境で二人が記した手紙には、一体何が書かれているのでしょうか?

この記事では「瓶詰の地獄」のあらすじやネタバレから感想・考察まで徹底的に解説していきます。

「瓶詰の地獄」とは?

人間誰しも、罪を犯したことがあるでしょう。

兄と妹だけで生きていかなければならない状況で、時間の経過と共に二人の心と体は成長していきます。

島にやってきた悪魔の誘惑に、二人は打ち勝つことが出来ませんでした。

新約聖書を道しるべとして生きていた二人は、犯した罪の意識に耐えられず、自ら命を絶ちます。

二人の罪の告白は、3つの瓶詰の手紙となって第三者の手に拾われました。

 

作者名

夢野久作

発売年

1928年発表

ジャンル

近代文学

時代

近代

 

夢野久作のプロフィール

夢野久作 1889年〜1936年

福岡県出身の日本の小説家です。

中学校に入学してからは宗教やスポーツ、文学に夢中になったそうです。

文学や芸術への興味はその後もつづき、慶應義塾大学の文学科に入学しました。

しかし、文学への道に反対する父親からの言葉により、大学を中退して杉山農園を営みましたが失敗に終わりました。

その後、雑誌「黒白」にエッセイなどを書くようになり、1926年「ドグラマグラ」の執筆を開始します。

1936年に脳出血を起こして倒れ、そのまま息をひきとりました。

 

夢野久作の代表作

夢野久作の作品には大きく分けて2つの特徴があります。

1つ目は独白形式です。

1人の人物が事件の真相を独白する形で物語が進むのが特徴で、「悪魔祈祷書」や「支那米の袋」が有名です。

2つ目は書簡体形式です。

手紙をそのまま文にするのが特徴で、「少女地獄」や「瓶詰の地獄」、「押絵の奇蹟」が有名です。ちなみに、「ドグラマグラ」も作品の半分が書簡体形式によって構成されています。

 

瓶詰の地獄の主要登場人物

市川太郎

イチカワアヤコの兄です。

島に漂着した当時11歳の少年でした。

イチカワアヤコ

市川太郎の妹です。

島に漂着した当時7歳の少女でした。

 

瓶詰の地獄の簡単なあらすじ

ある日、海洋研究所に××島村役場から3つの瓶詰の手紙が送られてきました。

第一の瓶の手紙には、離れ島に助けが来たという記述があります。

しかし、「私達二人」は助けが来る前に海に身を投げて死のうと思うのだ、とあります。

どうやら「私達二人」は、犯した罪を償うために自身の肉体と霊魂に罰を与えなければいけないようでした。

第二の瓶の手紙には、太郎とアヤ子が島に漂着してからの生活が書かれています。

ある日、天国のような二人の生活に悪魔が忍び込んできて、太郎とアヤ子の生活は地獄に変わってしまいました。

第三の瓶の手紙は、両親に無事を知らせる内容と、助けを求める内容だけが簡単に書かれていました。

 

瓶詰の地獄の起承転結

【起】瓶詰の地獄のあらすじ①流れ着いた3つの手紙

××島の南岸に、樹脂で封をしたと思われるビール瓶が3つ流れ着きました。

砂に埋もれていたり、岩の隙間に挟まっていたりしていたので、この島に流れ着いてからかなりの時間が経っているようでした。

中を確認したところ、公的な文書などではなく日記帳の切れ端のようなものなので、漂着した日時を特定することは出来ません。

××島村役場は、海洋研究所から潮流研究のために海での拾得物を届けるようにいわれていたので、何かの参考になればと思い、海洋研究所に3つの瓶を送りました。

 

【承】瓶詰の地獄のあらすじ②贖罪

第一の瓶の内容には、「神様からも人間からも救われ得ぬ哀しき二人」から「お父様・お母様・皆々様」に宛てられた手紙が入っていました。

どうやら二人は離島に取り残されていて、そこに助けが来たようです。

二人は、最初に出したビール瓶の手紙を両親が読んで、助けに来てくれたのだと思っています。

手紙を書いている人物は、書きながら手が震えて涙で目が見えなくなったそうです。

しかし、うれしさで泣いているわけではありませんでした。

いまから二人は強く抱き合って崖の上から海に飛び込まなければいけないのだ、と記されています。

二人はなにか重い罪を犯し、その償いのために死ななければいけないのだそうです。

自分たちのことを、フカの餌食になるしか価値がないといい、この手紙を読むであろうひとたちに別れを告げました。

 

【転】瓶詰の地獄のあらすじ③天国のような島

第二の瓶の内容には、二人が離島に着いてからいままで生き延びてきた経緯が記されていました。

離島は年中夏のようで季節感がつかめず、もう10年くらい経つような気がするようです。

島に漂着したときに二人が持っていたのは、一本のエンピツと、ナイフと、一冊のノートブックと、一個のムシメガネと、水を入れた三本のビール瓶と、小さな新約聖書が一冊でした。

しかし、二人は幸福だったようです。

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離島には二人を襲うような動物はおらず、食べ物も豊富だったようです。

二人は壊れたボートで小屋を作り、高い崖の上に登って聖書を読みました。

二人は時々喧嘩もしましたが、直ぐに仲直りをして学校ゴッコをしたようです。

「私」はアヤ子を生徒にして、聖書の言葉や字の書き方を教えていました。

この島は、天国のようだったと記されています。

 

【結】瓶詰の地獄のあらすじ④地獄のような島

平和な離島の幸福の中に、恐ろしい悪魔が忍び込んできました。

月日が経つにつれて「私」の目には、アヤ子の身体が奇蹟のように美しく育っているように見えました。

「私」はアヤ子が肩に飛びついてくる度に、自分の胸が今までと違ったようにワクワクするのを自覚しています。

そしてアヤ子もまた、今までとは違ったような気持ちになっていることが「私」の目からみてもわかりました。

あるときアヤ子は、「私達どちらかが死んでしまったら、どうしたらいいでしょう。」と泣き出してしまいました。

「私」は崖の上に登り、神に自分の命を預けましたが、神からの思し召しがなかったことから、ある決心をして崖を降りました。

そして、聖書を燃やします。

ふとアヤ子を見ると、潮がどんどん高くなる海の大岩の上で何か祈っているようでした。

「私」はハッとしてアヤ子を連れ帰り、その後はお互いに慰め合い、励まし、同じ場所に寝ることもできない気持ちになりました。

「私」は、明日にでも悪魔の誘惑に負けることがないように祈りました。

この美しい島は、もうスッカリ地獄になってしまったようです。

第三の瓶の内容には、カタカナと簡単な漢字で「ハヤク、タスケニ、キテクダサイ。」と記された手紙に、「市川太郎 イチカワアヤコ」の名前がありました。

 

瓶詰の地獄の解説(考察)

まず大前提として、離島に漂着した二人が犯した罪が近親相姦であることを確認しておきましょう。

そのうえで、「瓶詰の地獄」について解説していきます。

「瓶詰の地獄」の構成を大きく分けると、「××島村役場から海洋研究所への手紙」「第一の瓶の内容」「第二の瓶の内容」「第三の瓶の内容」となっています。

物語の中の全てが手紙という「瓶詰の地獄」ですが、このなかで意味をなしている手紙は冒頭の「××島村役場から海洋研究所への手紙」だけです。

太郎が書いた手紙は、両親に助けを求めたり、罪を告白する内容なので、相手が手紙を読んでくれなければ意味をなしません。

しかし、太郎の記した3つの手紙は、××島の住民に拾われてしまいました。

作者は3つの手紙を××島の人に拾わせることで、作品にどのような意味を持たせたのでしょうか?

 

瓶詰の地獄の作者が伝えたかったことは?

罪を犯した人間の悲しみと後悔を描いたのだと思います。

太郎は、妹であるアヤ子と身体の関係を持つことに罪の意識を感じていながらも、自分の欲望に勝つことが出来ませんでした。

そして、罪の償いとして3つの手紙を書き、自ら命を絶ちました。

しかし、その手紙が二人の両親に読まれることはありませんでした。

両親に宛てた手紙が××島の人に拾われてしまい、太郎が試みた懺悔は意味のないものになってしまったのです。

最終的に太郎は、両親の目の前で海に飛び込んで命を絶つわけですが、これもまた太郎の自己満足に過ぎません。

助けにきた両親に直接の懺悔をするのではなく、読んでくれるかもわからない手紙に贖罪を委ねたわけです。

自分の欲望に打ち克つことができずに、人間は罪を犯してしまいます。

犯した罪の償いを試みることもまた、人間の醜い部分でしょう。

贖罪とは、自分が罪から逃れ、苦しみから解放されるための自己満足な行為なのかもしれません。

 

瓶詰の地獄の3つのポイント

ポイント①二人がすがっていた新約聖書

作中に登場する新約聖書では、アダムとイブが禁断の果実を食べたことによって罰を受けることになります。

果実を食べてしまったことによって、これまで裸で過ごしていた二人の心に「羞恥心」が生まれ、労働の罰と出産の罰が与えられました。

そして、人間はいつかは絶対に死ななければいけないという罰も与えられたのです。

羞恥心の芽生えや死への恐怖は、太郎とアヤ子に通ずるものがありますね。

新約聖書を読んでみることも、「瓶詰の地獄」を読み解くヒントになるかもしれません。

 

ポイント②太郎とアヤ子のサバイバル能力

幼い二人が離島で生きていく力に、驚いた方もいたのではないでしょうか?

二人は寝床を作り、魚を捕まえて、ムシメガネで火を起こして暮らしました。

当時11歳と7歳の子供にできる業とは思えませんが、その設定がとても面白いですね。

私たちも、いざという時のためにある程度のサバイバル能力は身につけておきたいものです。

 

ポイント③漫画「瓶詰の地獄」

実は「瓶詰の地獄」は、漫画家の丸尾末広の手によって漫画化されています。

レトロなタッチで独特の世界観を醸し出す丸尾末広の絵は、兄妹が過ごした地獄の雰囲気にぴったりですよね。

ぜひ、漫画もあわせて読んでみてください。

 

瓶詰の地獄を読んだ読書感想

はじめてこの作品を読んだ時、心が重くなりました。

遭難した中でも自分達で楽しく過ごそうとしていた兄妹の生活に、二人の「成長」という悪魔が入ってきてしまいました。

普通の生活ができていたら犯すことのなかった罪を背負って行かなければならなくなった二人には、同情するしかありません。

聖書を生きる希望としていた二人には、近親相姦が余計に重い罪に思えたのかもしれません。

人間の欲望を抑えることは、とても困難だということですね。

 

 

瓶詰の地獄のあらすじ・考察まとめ

誰でも生きていれば罪を犯してしまうものです。

それは自覚的かもしれませんし、無自覚的かもしれません。

罪を犯した後には、後悔の念しか残らないことは誰でもよく知っているでしょう。

それでも人間は罪を犯し続けます。

太郎とアヤ子の兄妹のように命をかけて償うか、生きて償うか、はたまた償わないか。

選択が自由な世界で、あなたはどの道を選びますか?

「生きる」ということを改めて感じさせられる作品ですね。

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