「告白」とは、数々の賞を受賞している湊かなえによるミステリー小説です。
2010年には中島哲也が監督を務め、松たか子さん主演で映画化されています。
現代社会の問題を反映しており、発表された当時から話題を集める作品でした。
果たして、この作品はいったい何が「告白」されているのでしょうか?
そして、作品のタイトルに込められた意味は?
作者がこの作品を通して伝えたかったことは?
今回は、そんな「告白」の感想や考察までを詳しく解説していきます!
「告白」とは?
「告白」とは、湊かなえによるミステリー小説です。
2009年には本屋大賞を受賞しており、他にもこのミステリーがすごい!などにランクインする作品です。
湊かなえは本作でデビューを果たし、その才能を世に知らしめました。
松たか子さん主演で映画化もされており、第34回日本アカデミー賞では4冠を受賞しています。
過激な描写が多いためR15指定がされていますが、原作の緊張感を余すことなく表現した傑作となっています。
作者名 |
湊かなえ |
発売年 |
2008年 |
ジャンル |
ミステリー |
時代 |
現代 |
湊かなえのプロフィール
「告白」の作者である湊かなえは、1973年1月に広島県尾道市で生まれました。
彼女は幼いころから江戸川乱歩や赤川次郎などの作品に触れていました。
2007年に「答えは、昼間の月」という作品で第35回創作ラジオドラマ大賞を受賞後、「聖職者」でデビューを果たします。
「告白」は「聖職者」の連作集であり、発表後は大ベストセラーとなりました。
ちなみに、ペンネームの湊かなえ(みなとかなえ)は、本名の金戸美苗(かなとみなえ)をもじったものだそうです!
告白の特徴
中学校を舞台とした作品で、登場人物の告白により物語が進んでいきます。
ある日のホームルーム、娘を亡くした1人の教師の告白から始まり、事件の全貌が少しずつ明るみになっていきます。
なぜ娘は亡くなったのか、なぜ遺体は校内で発見されたのか、なぜこのことを教え子たちに告白したのか…。
その告白により、事件の関係者たちへの復讐が始まるのです。
告白の主要登場人物
森口悠子 |
S中学校で教師を務める。娘を教え子に殺されたことから、彼らに復讐をする。 |
森口愛美 |
悠子の4歳の娘。学校のプールで殺害された。 |
桜宮正義 |
愛美の父親であり、悠子の婚約者。HIVに感染している。 |
渡辺修哉 |
少年A。愛美を殺害した実行犯。成績優秀で、自分を捨てた母親に執着している。 |
下村直樹 |
少年B。修哉と共謀し愛美を殺害した。悠子の復讐により家に引き籠るようになる。 |
告白の簡単なあらすじ
S中学校1年B組の担任である森口悠子は、教師をやめることを生徒たちに伝えます。
皆、悠子の娘の愛美が校内のプールで溺死したことが原因だと推測します。
しかし、悠子の口から告げられた言葉は、思いもよらないものでした。
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
森口悠子の告白により、事件は動き出します。
告白の起承転結
【起】告白のあらすじ①
S中学校1年B組の担任である森口悠子は、3学期の終業式の日に、教師をやめることを生徒たちに伝えます。
その理由は、校内で起きた悠子の娘の愛美の事故死によるものだと生徒たちは思います。
しかし、悠子は愛美は事故死ではなくこのクラスの生徒2人に殺害されたのだと告白します。
悠子は2人を「A」・「B」と呼びます。
彼らはある日の放課後、共謀して校内のプールで愛美を感電させました。
愛美は気絶し、Aはその場を去りますが、Bは愛美をプールへ投げ込み殺害します。
このことを知った悠子は警察へ通報することはせず、ある復讐をします。
彼らの飲む牛乳の中に、HIV感染者である桜宮の血液を混ぜていたのです。
この告白により、A・Bを含めた1年B組は歪んでいきました。
【承】告白のあらすじ②
悠子は中学校を去り、1年B組はそのまま2年へと進級しました。
Aこと渡辺修哉は何事もなかったかのように登校していますが、Bこと下村直樹は家に引き籠るようになりました。
悠子の告白をきっかけに、2人への陰湿な嫌がらせが始まりました。
特に修哉へのいじめはエスカレートし、生徒たちはそれを楽しんでいました。
事情を知らない新しい担任である寺田の行動もあり、彼らが許されることはありませんでした。
【転】告白のあらすじ③
幸福な家庭で育ったように見える直樹は、実は母親からのプレッシャーに限界を感じていました。
自身がHIVに感染したと思ってからは、家族に感染させまいと家の中に引き籠るようになります。
直樹を溺愛している母親は、彼が暴力をふるうようになってからも歪んだ愛情を持ち続けていました。
そしてある日、直樹がやったことを知った母親は、包丁を使い心中しようとします。
直樹はその時母親から向けられた言葉に激高し、包丁を奪い刺し殺します。
その後直樹は精神的ショックにより、過去の記憶がおかしくなってしまいました。
【結】告白のあらすじ④
2人の牛乳には悠子の手で血液が混入されたはずでしたが、実は桜宮の手によってすり替えられていました。
これは同じく教師であった桜宮が、2人の更生を信じて決断したことです。
事件の主犯である修哉は、自身を捨てた優秀な母親に異常に執着していました。
そして母親に認められるために行ってきた数々の行動が全て無駄だったと知ります。
修哉は母親の気を引くため爆弾を学校に設置し爆破を試みますが、爆弾は別の場所へ移動されていました。
そこは修哉の母親がいる大学の研究室であり、全てを知っていた悠子の手により行われたものでした。
自らの手で愛する母親に手を下し、絶望する修哉に悠子はこう告げます。
「これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?」
告白の解説(考察)
少年たちの歪んだ感情を引き金に、恐ろしい事件が起きてしまいました。
そして復讐を試みた悠子の告白は、彼らの人生を大きく変えるものとなりました。
悠子の告白により動き出した数々の崩壊は、人の思い込みやそれまでの感情が爆発したものが影響しています。
この告白は、全てを壊すためのほんのきっかけに過ぎなかったのかもしれません。
告白の作者が伝えたかったことは?
愛美が亡くなった一件は、悠子が真相に気づかなければ事故のままで終わっていました。
真相に気づいた悠子が復讐を企て、生徒たちに告白したことから事件の全てが明るみになっていきます。
現実で起きている事件も、様々な目線があるからこそ真実がわかります。
私たちが見ているものは、ほんの一角に過ぎないというメッセージを感じました。
告白の3つのポイント
ポイント①それぞれの「母子」の形
この作品は、母子の絆が強く描かれています。
悠子は娘の愛美を溺愛していますが、教え子たちにより殺害されてしまいます。
直樹は母親からの愛情を受け入れられず、包丁で刺し殺します。
修哉は心酔していた母親を、意図せず手にかけてしまいます。
悠子が愛美へ抱く愛情は正常なものでしたが、愛美が殺害された後、歪んだ復讐心へと変化してしまいます。
それぞれ形は違いますが、大きく歪んだ愛情を抱えており、苦しみの中で終わりを迎えています。
ポイント②正しい正義はあったのか?
悠子は復讐を果たすため2人の犯人に手を下そうとします。
しかし、桜宮はそんな悠子を教育者の立場として引き止めます。
子どもたちの成長を見守る側として純粋な更生を望んでいますが、悠子は違います。
同じ教師でありながら違う考えを持つ2人でしたが、どの正義が正しかったのかは誰にもわかりません。
ポイント③原作と映画版のクライマックスの違い
原作と映画版では、少し異なるクライマックスとなっています。
悠子は修哉に最後のセリフを告げた後、「なーんてね」と笑います。
これは「更生の第一歩」という悠子の言葉にかけられているのだと思います。
この場面があることで物語の捉え方が大きく変わるので、どちらも触れてみることをお勧めします。
告白を読んだ読書感想
見えないところに隠されていた数々の歪んだ心理や行動に、強い恐怖を感じました。
登場人物の行動についての理由もそれぞれの立場から告白されており、少しずつ人となりが分かっていきます。
愛情を受け入れてもらえず、苦しむ子どもたちの様子は読んでいて辛かったです。
ですが、悠子の告白は復讐として正しかったように思える最後でした。
告白のあらすじ・考察まとめ
復讐を決意したある女教師の告白によって引き起こされる事件。
物語に救いはなく、それぞれ絶望の道へと進んでいきます。
全ての復讐が終わった後、悠子は何を思うのでしょうか。
湊かなえの傑作ミステリーを味わいたい方はぜひ読んでみてください!