人生観を変える本というと、まず思い浮かぶのが自己啓発本ではないでしょうか。
自己啓発とは、本人の意思によって自分の能力を高めたり、精神的な成長を目指すことなので、その過程で人生観に大きな変化があることが多いのは確かです。
しかし、自己啓発本と聞くと少し堅苦しく、本を手に取ることに抵抗を感じる人もいるのではないでしょうか。
そんな方におすすめなのが、小説!
そう思うかもしれませんが、侮ってはいけません。
今回は、人生観を変えてしまうくらい印象深い小説を、国内・海外の作品を含め5冊ご紹介します。
普段あまり小説を読まない方でも読みやすい小説を選んでいるので、読書初心者の方にもおすすめです!
小説を読むメリット
小説を読む理由といえば、「単純に楽しいから」というイメージがありますよね。
「好きな作家だから」、「映画やドラマの原作だから」というのもよく聞く理由です。
しかし、実はそれ以上に、小説を読むことにはメリットがあります。
メリット①疑似体験ができる
当たり前ですが、人生は一度きり!
人生100年時代で長生きできるようになったとはいえ、生きている間には経験できないような知らない世界がたくさんあるということです。
その知らない世界を疑似体験させてくれるのが、小説なのです。
実際には体験していないことであっても、小説を読むことでその世界を想像し、シミュレーションすることができます。
それは、自分の人生を歩んでいるだけでは得られないことを、たくさん学べるということにもなるのです。
メリット②ストレス解消に効果がある
イギリスの研究結果によると、読書は散歩や音楽よりも高いリラックス効果があるとされています。
これは、小説の世界にのめり込むことで、現実の生活から受けるストレスが解消されることから生み出される効果と考えられています。
しかも、この効果はたった6分の読書から得ることができるそうです。
家にいながら短時間でストレスを解消できるという点も、小説の魅力です。
メリット③創造力がアップする
ビジネス書や自己啓発本とは異なり、小説は物語です。
文字のみの情報を頼りに、風景や状況、主人公の気持ちを自分で想像し、小説に描かれている世界を自分の中に創り出さなければなりません。
つまり、小説を読むということは、創造力を高める練習になっているということです。
技術が進歩し、ますますAIが普及する時代が来た時、生き残るためにも必要とされている創造力。
小説を読みながら楽しんでトレーニングができるなんて一石二鳥ですよね!
人生観をかえるおすすめの小説5選
おすすめの小説①ぼくは勉強ができない/山田詠美
あらすじ
主人公は時田秀美という男子高校生。
秀美はいわゆる「学校のお勉強」ができない。
しかし、クラスでも人気があり女子にもモテる。
そんな彼は、父親が誰かを知らず、自由奔放な母と祖父に育てられている。
シングルマザーというだけで、偏見を押し付けてくる周囲の人間たち。
自分を取り繕うことに一生懸命なクラスメート。
大人の価値観にがんじがらめにされている友人たち。
そんな中でも、秀美は自分に正直にまっすぐ生きていきたいと思う。
世間一般の価値観とは何なのかを考えさせられる一冊です。
おすすめポイント・感想
この本は、主人公が高校生ということで、大人には少し手に取りにくい小説かとも思いますが、ぜひ読んでいただきたい一冊!
主人公が高校生でも、単なる青春小説とは違います。
私はこの本を読み、自分の価値観とはどこからきたのかを深く考えさせられました。
同時に、自分の価値観を押し付けることで他人を傷つけていることがあるのではないか、他人には他人の価値観があり、本来はお互いにその価値観を共有し認め合うことが必要なのではないかと感じました。
実際にこの本を読んでからは、自分の価値観と他人の価値観は違って当たり前だと考えられるようになり、自分の言動に気を付ける場面が増えたように感じています。
長く人生を生きていくうちに形成されてきた「価値観」について改めて考えさせられる1冊です!
おすすめの小説②変身/フランツ・カフカ
あらすじ
主人公のグレゴール・ザムザは、いつものように自分のベッドで目覚めたが、異変に気づく。
自分が大きな毒虫になっていることに気づいたのだ。
家族はもちろんパニックになり、その日からザムザの日常は一変した。
極力家族に姿を見せないよう、自室に隠れるように生活する毎日。
親切な妹だけが世話をしてくれるが、家族は徐々に疲弊し、困窮していくことになる。
おすすめポイント・感想
主人公が変化してしまった毒虫が、実際にどういった虫なのかは、最後まで読んでもあまりわかりません。
そもそも筆者は、出版する際に「虫をイメージさせるような絵はやめてほしい」と言っていたそうです。
つまり、これは現代社会における引きこもりやニート、介護の問題を毒虫にたとえた本なのではないかと思います。
世話をする家族は徐々に疲弊し、本人を疎ましく思うようになり、ひどい場合は虐待などをしてしまうかもしれません。
家族はそこまで追い詰められてしまうのです。
そういった、どの家庭にも起こりうるであろうことを、一早く世に問題提起した作品かもしれません。
ある日突然、家族が「当たり前の存在」から変わってしまったとき自分はどうするのか、そんな時、家族とはどうあるべきなのかを考えさせられる作品です。
おすすめの小説③春琴抄/谷崎潤一郎
あらすじ
語り手が、春琴と佐助の墓参りをするところから話は始まる。
大阪の薬種商鵙屋の春琴は大変な美少女だったが、9歳のときに病気で失明。
生きるために音曲を学ぶようになり、両親が世話係にと春琴につけた丁稚の佐助も、春琴の弟子として三味線を学ぶようになる。
しばらくして春琴が妊娠していることが発覚するが、2人とも関係を否定し、生まれた子供は里子に出された。
やがて、三味線奏者として独立した春琴をまたもや不幸が襲う。
何者かによって顔に大火傷を負わされるのだ。
見るに堪えない自分の顔を見せることを嫌がる春琴のために、佐助は自分の両目を針で突き刺し失明する。
おすすめポイント・感想
映像化されている作品なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
私は、この本を読んで、人を愛するということはどういうことなのかを深く考えさせられました。
佐助は、本当に春琴自身を愛していたのでしょうか。
特に、佐助自身も失明した後は、自分の中に理想の春琴を作り上げてその対象を愛していたのではないかと思ってしまうのです。
春琴と佐助の話はあくまでも物語ですが、私たちはどうでしょうか。
パートナーに対し、その人自身を見て愛していると、胸を張って言えますか?
こうあってほしい、この人はこういう人だ、と勝手にイメージを作り上げている部分も少なからずあるのではないでしょうか。
そして、そのイメージと異なるとき、パートナーに対する愛情を失ったり、文句を言ってしまうのです。
私は、佐助が自分の目を刺したのは春琴のためではなく、自分の中の理想の春琴を守るためだと思います。
しかし、それは本当の愛なのでしょうか。
人生において必要不可欠とされる愛について、ゆっくり深く考えたくなる作品です。
おすすめの小説④老人と海/アーネスト・ヘミングウェイ
あらすじ
キューバの海を舞台にした、老人と大魚との格闘の物語。
主人公は年老いた漁師サンチャゴ。
彼はもう約3か月もの間、魚を釣ることができておらず、漁師仲間からもバカにされていた。
そんな中でも彼を慕っているのが、弟子のような存在である少年マノーリン。
しかし、両親によってマノーリンもサンチャゴの舟から降ろされてしまい、老漁師は1人でカジキを釣りに海に出る。
数日にわたる格闘とその後に起こる悲劇。
果たしてサンチャゴに希望はあるのだろうか。
何かに立ち向かう人間の姿に心打たれる物語。
おすすめポイント・感想
あらすじだけを読むと、老人が魚と格闘する話に人生観が変わるほどの価値があるのかと思ってしまうかもしれません。
しかしこの話の本質は、人間は全てを失ったとしても、手にしたい何かがあれば死力を尽くして立ち向かうことができるということだと思います。
サンチャゴは、漁師としての価値も、若さも、伴侶も、弟子も全てを失っています。
しかし、彼は卑屈になることなく、カジキを捕るという信念に動かされているのです。
もし、人生で大切な何かを失ってしまったら、きっと卑屈になったり落ち込んだりしますよね。
そこで諦めてしまうことも多いはずです。
また、私たちは日常生活に流されて、自分が本当は何が欲しかったのか、何がしたかったのかを忘れてしまいがちです。
手にしたい何かのために、がむしゃらに突っ走ることをやめてしまっているのではないでしょうか。
後悔のない人生にするために、自分と真摯に向き合おうと思わせてくれる作品です。
おすすめの小説⑤朝が来る/辻村深月
あらすじ
主人公は、栗原清和・佐都子夫妻とその子供である朝斗。
そしてもう一人、朝斗の生みの親である片倉ひかり。
栗原夫妻は、何の問題もない幸せな夫婦だったが、ただ1つだけ、不妊治療に苦しんでいたのだ。
原因は、夫の「無精子症」。
長年の治療を経て諦めようと決めかけていたとき、テレビの取材で特別養子縁組の団体を知る。
無事に子供を迎えることができたが、その子供の実母はたった14歳の少女だった。
6年の歳月を経て、朝斗の母親を名乗る女性から脅迫めいた電話がかかってくる。
実際に会ってみても、出産時に会った少女とは同一人物とは思えない。
この女性の目的は何なのか。
本当に朝斗の生みの母親なのか。
ミステリー要素も含んでいるようでいて、強烈なリアリティをもつヒューマンドラマ!
おすすめポイント・感想
こちらは、映画にもなった作品です。
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- 不妊治療
- 若年妊婦
- 望まない妊娠
- 家族との軋轢
- 特別養子縁組
など、どれも現代社会では問題になっているものばかり。
私は、それ相応の年齢になれば、自然と結婚して妊娠・出産できるものだと思っていました。
しかし、現代社会はストレスが多い生活のためか、年齢に関係なく不妊治療に苦しむ人がたくさんいます。
私の周りにも、不妊治療を受けている人は少なくなく、そして特別養子縁組をした友人もいます。
なぜ友人は養子を実子同様に育てることができるのか、生みの親はいったいどういう気持ちなのか、この本に出会う前の私には、不思議でなりませんでした。
家族とは何なのか、血のつながりは重要なのかなど、人生において大切にすべきものは何かを考えさせられる作品です。
小説を読んで自分の人生を考えよう!
人生観に影響を与える読書というと、小説はあまり選ばれないことが多いかもしれません。
しかし小説は、物語に惹きこまれていくうちに、自然と自分自身の人生と重ね合わせながら色々と考えさせられる本です。
すぐに人生観を変えるとまではいかなくても、読み終えた後には、きっと何かを考えさせられるはずです。